第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【Aパート】
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カラクリでできているらしく、複数の『歯車』をかみ合わせることで、非力な者でも剛力を引き出せることができるのだ。
今まで通ることのなかった、王族にしか伝えられていない通路の抜けし先。複雑に入り組んだ先に光の差し込めたる出口がある。3人はそこから抜け出て、外套を頭から羽織り、『待ち合わせ』の屋敷へ駆け込んだ。
ジスタート王都にて屋敷を所有するヴァレンティナの活動拠点。今頃ならば、『もう一人の戦犯』と『黒炎の神剣』が待ちかねているはずだ。
元帝国騎士団団長――オーガスタス=アーサー。
竜を、神を殺せる黒炎の剣――エヴァドニ。
揺れる馬車の中で数々の謀略を、ヴァレンティナは皮肉げに巡らせたものだ。
ジスタートの王族にしかしらない通路。遠戚であるが、この虚影の幻姫も『エステス』の姓をもつ王族である。
(確か、ブリューヌにも王族にしか伝えられていない聖窟宮の『秘密』がありましたね)
さらに皮肉。これから起こるであろう動乱は、その『ブリューヌ』と『ジスタート』の両国を巻き込もうとしているのだから。
ガタゴトと揺れる馬車の旅路も、とうとうヴァレンティナの屋敷へたどり着くことで終わりを告げた。
【ジスタート・王都シレジア・ヴァレンティナ屋敷・円卓会議室】
彼女の屋敷にある待合室へたどり着くや否や、当事者は円台の議机に座った。
ただエヴァドニだけは、シーグフリードの後ろに立っているだけで、何しようとしなかった。
「この度はよくぞお集まりいただきました。お歴々」
大鎌を背負った美女がそう挨拶の一言を申すと皆は席についた。
それは、異様な顔ぶれだといえる。なぜなら――一国の王と、かつての戦争の主犯、そして、一国の戦姫が同時に居座っているからだ。
「やれやれ、司法取引に応じてみたからいいものの、正直ここへ来るのはしんどい」
最も高齢と思われるジスタート王への嫌味をこめて、オーガスタス=アーサーはそっけなく吐いた。
その男こそ、元帝国騎士団団長オーガスタス=アーサーだ。かつて初代ハウスマンの資料を土産に現れたシーグフリードの話に乗せられ、最悪の黒竜ヴァルバニルの復活に一役買っている。
シーグフリードと同じ戦犯なのだが、この場にいる限りでは、やはりヴァレンティナ達に何かの取引を持ち掛けられたとみて、間違いないだろう。
「まったく、この部屋は独立交易都市のガラクタで埋め尽くされておるな」
オーガスタスの嫌味はなおも止まらない。
「ジスタートの戦姫たるお方が、骨董品集めが趣味とは……いやはや、ずいぶんと所帯じみた趣味をおもちのようで?」
「無駄口はそこまでです。では始めますよ」
タンタンと静粛音を鳴らし
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