第89話 激戦
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薩軍は熊本城包囲作戦に失敗し、配送を続けながら田原坂にて政府軍を迎え撃つことにした。
薩軍、政府軍ともにひかず、大激戦となったが、やはり政府軍の近代兵器に薩軍の武器では対抗することはままならず、物資物量の前にやはり敗走するしかなかった。
そして、宮崎県を経て、鹿児島の城山へと命からがら入ることとなった。
とうとう、魔界衆も8人が倒れ、残り天草を除くと3人になってしまった。
未だ作戦を立て直すことなく、じっと動かないでいる但馬守に大山は、不信感を募らせていた。
「但馬よ、ついにわしの出番ということだな」
宮本武蔵は、但馬守の前に立ち、見下ろした。
「好きになさるがよかろう」
但馬守は武蔵を見上げにやりと笑った。
(そうだ。この男が、まだいたのだ)
大山もまた武蔵を見上げた。
新免・宮本武蔵。
この時代に、この男に会えるとは思ってもみなかった。
剣を目指した者には、まさに神と言われる存在。そして、戦ってみたい相手。
もし、戦って倒されたとしても、それはそれで本望。
大山もまた薬丸白顕流の達人である。
小太刀を極め数々の伝説を残している。
が、武蔵を見たとき、勝てる気が全然しなかった。
もちろん、ほかの転生衆とやりあっても同じく勝てる気はしなかったのだが、武蔵は特別だった。
もし、武蔵が破れるような潮時だと考えている。たとえ、柳生但馬守がいたとしても隙をみて逃げだそうと。
「近藤とやら、但馬の作戦とはいえ、一緒に来なくてもよいのだぞ。わしの邪魔になれば斬り伏せてしまうからな」
武蔵は、近藤を睨み付けた。
「どうぞ、ご勝手に。私もそうしますゆえ」
近藤は、武蔵をいなすように笑った。
「あっ、それと、但馬よ。お主の出番はないと思え」
武蔵は但馬守に向かってにやりと微笑んだ。
「結構でござる。存分に戦いませ。ですが、我が倅は、今まで6人の男たちを倒してきたもの。油断ないさますよう」
但馬もまたにやりと微笑んだ。
「ふん」
武蔵は、いらだつように但馬守に背を向け、立ち去った。
「但馬どの、よもや、武蔵殿は倒させれしますまいな?」
大山は、確認のために但馬守に聞いた。
「さて、どうですかな?今さっき、述べたように魔界衆6人が倒されたのですからな。が、武蔵ならばと期待を込めるしかありますまい」
大山には、但馬守は武蔵が倒されてほしいと願っているように見えた。そして、天草にも焦りがあった。が、それを隠すかのように目を閉じ、静かに黙っていた。
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