第47話 甘くて苦いコーヒー
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俺を縛り付ける。
廃工場、泣き喚く子供たち、数人の男達、黒く艶光する何か。そして一面の赤い液体。何度も何度も夢に出てくるその光景を見て、それは正常だと思えず、ただただ恐怖を植え付けられている。
「ただ、今の俺と付き合ったら……穂乃果を巻き込んでしまいそうで怖いんだ」
「……なにそれ意味わかんないんだけど。痛い病気にでもかかった?」
「そう思いたければそれでいい。まぁ簡単に言うと俺には恋愛は似合わないってことさ」
嘘。本当はそんなのが理由じゃないのは俺が一番わかっている。だけど本当の理由を言葉にどう言い表したらいいのかわからいだけ。感覚でしかわからないのだ。
「……」
特に反応を返さず、こくりと喉を鳴らして珈琲の流し込む真姫。事情アリと察したのかそれ以上は言及して来なくなり、俺としては気が楽になった。
「まぁ大地の恋愛事情なんて私は興味ないわ」
「ツンデレか?ツンデレなのか?」
「ピアノで殴られたいの?」
「その前にお前ピアノ持てるのかよ!?そっちの方が怖いわ!!!」
やはりこの話は誰にも信じてもらえそうになく、いつもの如く隠し通すしかないと俺は思った。俺が記憶喪失であることは花陽しか知らない。しかも断片的なところだけ。彼女が口を漏らさなければ面倒なことに巻き込まれることは無いだろう。
「さて、寝るか……明日も早いし、真姫もあまり遅くまで起きてんじゃねぞ〜」
「だったらこの時間を返してほしいわね」
先にベランダに出たのは真姫だろうに、という言葉をおくびにも出さずに俺は軽く手を振って室内に戻る。少しだけ冷え切った珈琲は、何故かさっきよりも甘く感じられた。
「さむ。この時期の夜は冷えるなぁ……」
――――翌日
作詞、作曲、衣装各々の準備が整い、ようやく練習が始まった。
昨日のグループ活動で、それぞれの間に新たな絆が芽生えたのか、厳しい練習であるにも関わらず、生き生きとしていた。
あっという間の一泊二日の合宿は二日目三時ごろ終わりを迎え、俺たちは二週間後のラブライブ!東京都予選に向けて最終調整を行い、いよいよその時がやってくる。
舞台はUTXの屋上。穂乃果が優勝すると決意したその日に彼女は綺羅ツバサにアポイントメントを取り、屋上で魅せることになる。
―――μ`sの新たな世界を。
―――μ`sのユメノトビラを。
覚悟しろA−RISE。
これがμ`sの実力だ。
そして、その日はやって来た。
ラブライブ!東京予選、いよいよ開幕である。
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