第47話 甘くて苦いコーヒー
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「…いや、珈琲旨いなって」
「そうね、私も好きよ?珈琲は」
そう言う彼女だけど、ミルクもガムシロップも入れていないままの珈琲を一口口に含むと、一瞬酸っぱそうな顔をしていていた。一見の見慣れていそうな彼女だけど案外そうでないのかもしれない。真姫の新たな一面を知った瞬間だった。
「ねぇ大地」
「ん〜?」
「大地って、穂乃果と何かあった?」
「……なんでそう思う?」
「なんとなく、かしら」
それはどういう意味の質問だろうか?そんなこと聞かれるとは思わなかったので、どう答えるべきか迷った末に放った回答は、
「……穂乃果に告白された」
隠すこともなく、俺は正直に告げる。これで弄られようが何言われようが耐えるしかない。真姫に限ってそんなことは無いと思うけど、それでも問題はあるかもしれないから。
「は?嘘はやめてよね」
「そう思いたきゃそれでいいさ。俺だって整理できてねぇんだから」
恥ずかしさを隠すために珈琲をがぶ飲みしながら視線を逸らす。そんな挙動不審な俺の態度に『ほんとなの?』と驚愕を露わにする真姫。
「にこちゃんにはバレないようにしなさいよ」
「……なんも言わんのか」
「別に人の恋愛に入り込む様なことはしたくないわよ。ただ……思うことはあるわ」
哀愁漂う真姫の表情に、身構える俺。
一体何を思っているのか想像できないけども、何か大切なことを話しそうな勢いなので生唾を珈琲で流し込む。
「だって、どう見ても穂乃果は大地の事大好きじゃない。まぁ貴方は他の事に夢中で気づかなかったでしょうけど」
「それについては否定しねぇ。告白されるまで気づかなかったぞ」
事実、穂乃果はそういうのに興味ない女の子だと思い込んでいたから、告白されて衝撃を受けたのと同時に今までの彼女の言動が紐を解くようにつながったのだ。
「いや、そりゃもちろん嬉しかったし、俺だって穂乃果のことは好きだ。好きだ……けど」
「けど?他に好きな人がいるとか?それとも穂乃果をそういう目でみることができないとか?」
「……いや、そうじゃねぇ。そうじゃねぇんだ」
『どういうこと?』という真姫の質問に返せずに俺は押し黙る。
穂乃果と付き合うことになったら―――という未来は描ける。穂乃果だけじゃない、海未やことり……μ`sのメンバーとそういう関係になれたらという、あくまでなれたらの想像はできる。
だけど俺にはそれを実現できる人間ではないのだ。
……違う。正確に言うと実現できる人間ではないかもしれないのだ。俺は記憶が無い。過去に何をしたのか知らない、覚えていない、思い出せない。
でも、時々夢に出てくる光景が
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