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μ's+αの叶える物語〜どんなときもずっと〜
第47話 甘くて苦いコーヒー
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分か?今までにない曲調だな」

 必死に纏め上げているのだ、珈琲の一杯くらい差し入れでもしよう。
そう思って、残りのコーラを飲み干してごみ箱に投げ捨て、戸棚からコップやら何やらを取り出す。真姫は……多分ブラックでもいけるだろう。特に砂糖とか添えずにそのまま持って行くことにした。







 ノックは三回。正確なのは忘れたが、確か二回だとトイレに人がいるかいないか確認するときの回数だった気がする。そんなことはどうでもよくて、『どうぞ』という真姫の声が聞こえたので、音を立てずにゆっくりとドアを引く。
 


「なんだ、貴方だったのね」
「なんだとはなんだよ。俺じゃ不満でしたか?」
「別にそんなこと言ってないわよ。それより何?もう少しで曲出来上がるから邪魔しないでほしいんだけど……」
「邪魔しに来たわけじゃねぇって。ほれ、差し入れだ」



真姫は俺のが持っているカップを見て小さくため息をつく。


「はぁ、なんで珈琲なのかしら」
「……飲めないのか?」
「違うわよ!寝る前に珈琲飲むと眠れなくなるでしょって話!!」
「あ、あぁそうか。それはすまんかった。別の持ってくるよ」

 「めんどくさいからいいわよ」と言って、俺の手からカップを奪い取り、静かにピアノ脇のテーブルに置く。表情からするに、飲めないわけではなさそうで一安心。


「楽しみにしているからな」
「ええ、任せて。絶対みんなで……ラブライブ!出場するんだから」
「強気な発言で結構。まぁ真姫のことだからスランプというか、先輩の為に―――なんて考えてたんじゃねぇのか?」
「あのね、勝手に人の思考読まないで。確かにそうだけど……今はそうじゃないから」

 きっとグループ活動の時に何かあったんだろう。そしてこういう時に何かいいアドバイスをしてくれるのがにこという先輩。いつも弄られたり先輩としての扱いに欠けるものがあるけれど、こういうところは他の三年生にはできない要素だと思う。それはにこの長所であり、魅力だ。


「ま、ことりも海未も順調らしいし、明日には練習できそうだな。予定通りにいかなかったけど」
「それは悪かったと思うわ。しつこいわね」



 仏頂面でピアノの鍵盤をしまい、カラカラとテラスの扉を開けて出ていく。薄いカーテンを透かして月の明かりが射し込んでくる光景に惹かれたのだろうか。
彼女の背中を追って、テラスに出てみると、夜空には真ん丸な月が光輝いていて俺たちを明るく照らしてくれている。
 俺は手すりに体重を乗せて珈琲を一口。苦いし濃いけど、ちっとも舌にもたれてこない。そもそも珈琲は得意ではないが、自然と体に染み入ってくるような自然な味わいに自然と笑みがこぼれる。

「何一人で笑ってるのよ、気持ち悪い」

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