第4章
3節―刹那の憩い―
願いと想い
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ウヤは全力の拍手でレーヌを褒め称えたのである。
「あぁ〜疲れたぁ」
「お疲れさん」
拍手が鳴り止み、人々がそれぞれに家へと帰った。
この場の興奮の余韻を残して、元に戻ったレーヌとソウヤの間に心地よい静寂が起こる。
「…すごく良かったよ」
だからふとこの言葉が出た。
感謝や興奮を全て拍手に詰め込んだはずだが、それでもソウヤは自分の口でレーヌにそう伝えたかったのだ。
「…ちゃんと、届いたかしら」
少し、間を開けてレーヌはそうソウヤに問う。
二重の意味でソウヤに聞いていた。
ちゃんと観客達に自分の“願い”は届いたのか。
ちゃんとソウヤに自分の“想い”は届いたのか。
そんなの考えるまでも無かった。
「届いたさ、絶対に」
だってあんなに集中して世界を作り出したのだから。
だってあんなに熱烈でドストレートだったのだから。
届かない訳がない。
観客でも分かる、レーヌが英雄のことを大好きだってことを。
ソウヤは分かる、レーヌが自身のことを大好きだってことを。
「…少し、聞いてる分には恥ずかしかったけどな」
「――馬鹿」
そう言ってレーヌはソウヤの横腹を小突く。
「…は」
「…ふ」
何となく、笑いたくなった。
こんな空気でいるのが恥ずかしくなった。
「あははははっ!」
「うふふふふっ!」
ソウヤは笑いながら、レーヌに感謝する。
“貴方がやっていることは間違っていない”と太鼓判を押してもらったような気がしたから。
神を殺す、それは偉業ではあるが同時に大罪でもある。
だからどこかでソウヤは臆していた、本当に世界神に刃向っていいのかと。
手遅れなのは理解している、それでもいざ真正面から戦うとなると気後れをするものだ。
―けど、そんなの間違いだった。
“後悔しない”と決めたはずだろう。
絶対に元の世界に戻ると、それが“自分が選んだ道”だと決めたのだろう。
なら、それを突きとおすだけで良かったのだ。
そうして、しばらくの間ソウヤとレーヌは小恥ずかしい雰囲気を解消するため、2人で笑い合っていたのだった。
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