第4章
3節―刹那の憩い―
願いと想い
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しい風景を作り出せるのに。
人々の笑顔を思えば、こんなに新鮮な景色を見せられるのに。
――けれど、戦うとき幻は凶器となってしまう。
苦しみ、憎しみ、怒り、悲しみ、恐怖、哀しみ。
負の感情を積み重ね、相手を容易に絶望させ精神を破壊出来てしまう。
そのようにも使えてしまうのが非常にショックだった。
「それでは語らいましょう、最新の英雄の話を」
レーヌは舞いながらそう言うと、また杖を一回床で叩く。
それは、襲い来る魔物や魔族と自ら率先して戦い、迫りくる天使たちに刃を向ける英雄の物語。
人々の生活の為に巨大な剣を振るい、人々の平和の為に己の体を傷付け戦い続けた英雄の物語。
――本当は自身の願いの為に敵を倒し、自身のエゴの為に自分にすら目を背けた英雄の物語だ。
彼は異邦の民、戦いを知らなかった。
けれど彼は特別な力を持ち、その力を使って敵をうち滅ぼし、自身を成長していく。
そんな青年が出会うのは7人の“申し子”たち。
彼女らの力を借りながら、青年は魔族や天使たちと戦い見事打ち払う。
こんな“作り話”を聞いて、ソウヤは胸が熱くなるのを感じた。
自分の物語はこんなに綺麗じゃない、自分の物語はこんなに普通じゃない。
――だが、レーヌの込められた想いに胸が熱くなるのだ。
私が好きな英雄はこんなに凄いのだと、私が惚れた英雄はこんなに偉いのだと。
私が愛する英雄は“こんなことまで出来てしまう”のだと。
観客の1人であるソウヤにだけ、わかるようにレーヌは物語を語る。
―確かに、そうだな。…俺はそう“在るべき”だ。
確かに自分は語られる英雄のように尊い思想なんて持ってないし、確かに自分は語られる英雄のように正義の味方なんかじゃない。
それでも、そう“在りたい”と思えた。
本当はそうではなくても、根本では違っているとしても、人々から見た自分はこう“在るべき”なのだ。
誰よりも人々の安寧を願い、誰よりも人々の平和を叶える…そんな存在に。
これは人々の願いだ。
これは人々の想いだ。
これは人々の救いだ。
だからソウヤは英雄たるべきだ。
これはレーヌの応援だ。
これはレーヌの誇張だ。
これはレーヌの宣伝だ。
だからソウヤはそう在るべきだ。
「――めでたしめでたし。ご清聴、誠にありがとうございました」
気付けば幻の現実の狭間は終わっていた。
最後に惚れ惚れするほど綺麗に一礼するレーヌに、拍手喝采が起こる。
それだけに、このショーは素晴らしかったということだろう。
素晴らしいショー。
観客とはまた別の視点からみたソウヤからしてみても、同じ感想を持っていた。
だから、ソ
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