暁 〜小説投稿サイト〜
グランドソード〜巨剣使いの青年〜
第4章
2節―変わらぬ仲間―
侍が望むは――
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深春にはわかってしまう。
 ここで叫んでしまえば、拒絶してしまえば、思ってしまえば『試練』に失敗するのだと。

 深春の“精神”の『試練』に立ち塞がる存在。
 それはかつて尊敬し、心から誇りに思っていた母なのだ。

 ―結局、私はこの母の顔を忘れることはできない。

 心から深春に死んでしまえと叫び、心から深春を拒絶し、心から深春を嫌いだと思う…その母の顔を。
 視線を合わせるだけで、彼女の憎悪が伝わるほどに深く…黒い感情。

 ―怖い。

 深春は無意識に思う。
 母が怖いのではない、“母の目”が怖いのだ。

 どれだけ口で死ねと、消えろと言われても構わない。
 どれだけ手や足で殴られても、蹴られても構わない。

 ただ、“その瞳”が怖かった。

 口だけならばどれだけでも嘘だと思える。
 殴られても蹴られてもまだ嘘だと思える。

 ただ、“その瞳”からは本物の感情が伝わってくるようで、偽れなくて…怖かった。

 母の目を見るたびに、深春は彼女が本当に自分のことが嫌いなのだと、死んでほしいのだとわかってしまう。
 それが嫌だった。
 だから深春は母と視線を合わせないように過ごしていたのだ。

「ねぇ深春」
「――!?」

 母に、慈しむように呼ばれ深春は体中が震えるのを感じた。
 ガタガタと体が笑えるくらいに震え、目が気持ち悪いほど上下左右に動き、口もガタガタと鳴らし出す。

 もう、限界だった。

「……てよ!」
「深春…?」

 うるさい。

「やめてよ…!」
「どうしたの?深春」

 もう、呼ばないで!!

「そんな目で私を呼ばないで!!!!」

 視界が、暗転…す……る。




 次に気づいた時、深春はベッドの中で寝転がっていた。
 未だ定まらない視界の中で、深春は大きくため息をつく。

「また…駄目だった」

 精神が疲れ果てていたのか、深春は結局意識を取り戻せぬまま、また深い眠りについた。




 目覚めては『試練』を受け、心が悲鳴を上げ倒れる。
 そんな毎日を送っていた深春はもうすでに精神を消耗しきっており、限界に近かった。

「――ではミハル様、『試練』のご達成…お祈りしております」
「行って…来るでござるよ」

 同じ言葉を繰り返し、深春は今日も『試練』に赴く。
 一歩、歩むたびに心臓と胃と腸と脳が痛みを伝えてきた。
 それはストレスが過度に溜まり、内臓の管理が全く出来ていないから。

 けれど…深春は1人で進まなければならなかった。
 『試練』は1人で受けるもの、そうルールで決まっているからである。
 誰も深春を助けられない――

「そんな決まり(ルール)、拒否だ」

 
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