第4章
2節―変わらぬ仲間―
雷は轟き光は奔り――
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とする騎士にまっすぐ瞳を向ける。
“気にするな”と。
覚悟と忠誠、そして最後の誇りを持ち続ける天使の騎士に、彼女はそれ以上言及する気にならなかった。
「ならば、ここだけ私は“騎士”の名を捨てよう。今だけ私は“ただの人”となる」
「…すまない」
自身から騎士の名を捨てることで、相手も騎士の名を捨てることが出来た。
故に、無用な枷を持たずして天使は戦える。
…敵にここまで情けを掛ける彼女こそが、本当の騎士だと天使は認めざるを得なかった。
「私も今だけ…今だけは騎士の名を捨てよう。ただ、貴殿を仕合う為に」
両方とも、相手が悪い相手ではないと知っている。
けれど戦いを止める理由にはならない。
否、出来ないのだ。
「――『雷神の申し子』エレン」
「――『権天使』リシュヴァ」
改めて、剣を向けあう妖精と天使。
“騎士”の名を一時期捨てた彼女らに、もう楔はない。
姿が掻き消える。
始まるのは“仕合い”ではなく、“闘い”だ。
見るものを美しいと思わせる光は要らず、見るものを見惚れさせる身体の動きも要らない。
ただあるのは、“命を奪い合う”もののみ。
「“天使の剣”…!」
「“ウォルタ・ディバイル”!」
光る出力を抑え、その分の僅かな魔力さえも剣に凝縮しリシュヴァは攻撃する。
それに対しエレンは当たる部分の少し上に一瞬だけ水の壁を出現させると、それで稼いだ時間を使い背中に回り込んだ。
使う魔力は最小限。
ただ単純に相手を殺す為に不要な部分は切り捨てる。
「“雷剣”…!」
「“天使の守護”ッ!」
ほんの刹那の間に創り出された雷の剣にリシュヴァは背中に回り込まれ、回避することも出来ず苦し紛れに天使の壁を創り出す。
しかし、本来出力が全く違うその威力の差に雷の剣は成すすべもなく威力を失った。
それを見逃すはずもなく、リシュヴァは振り向きながら左手に持つ盾を消し天使の剣を両手で持ち構える。
攻撃が来ると察したエレンはすぐさま足に雷を纏わせ離れようと試みた。
「“天を呑む大地”」
しかし、突如として生えた泥にエレンの足は絡め捕られ固定される。
「ぐっ…!」
身動きの取れないエレンに、リシュヴァは荒げた息を整えると両手で持つ天使の剣を大きく上に構える。
段々強く光り始める剣を見てリシュヴァは叫んだ。
「――“天呑む神々の刃”!!」
煌びやかに光る半透明の宝石…“神々宝石”で創られた剣がエレンを襲う。
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