第4章
2節―変わらぬ仲間―
英雄と狂鬼の剣戟
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「…お前と手合せするたび、毎回思ってたんだ――」
「何を?」
ナミルは大きくため息をつくと大剣を肩に担ぐ。
その顔は、怒りで染まっているように見えた。
2人が熱くなっているのを瞬時に察して離れているレーヌも、ナミルがこの後言いたいことを理解する。
「これはソウヤが悪い」と内心思ってる中、ナミルが叫び突撃し戦闘が始まった。
「――なんでお前は俺に本気を出さねぇ!」
「ッ…!?」
戦闘慣れし、技術を身に着け、生物で最も最強を誇るソウヤでさえ、ナミルの速度に目を見張る。
地面に着く足から極小の爆発を起こし、それを加速装置としてナミルがソウヤに突っ込んだのだ。
鍔迫り合いする中、ナミルはソウヤに吠え続ける。
「いつもいつも、“貰い物の力”だから本気を出さなかったのか!?」
「違う!仲間を傷付けたくないから、本気を出さないんだよ!」
流石にここまでされてソウヤも黙っていられず、ナミルに叫んだ。
確かにソウヤが本気を出してしまえば、間違えて傷付けてしまうかもしれない。
だが、それは確かに“正論”であっても“間違っている”。
ソウヤが下がることで鍔迫り合いを止めるが、ナミルはそれでも前に出て自身のリーチから離れようとしない。
大剣と片手剣、そのリーチ差は歴然で不利なのは明らかにソウヤだった。
「傷付くのはしょうがねぇだろ!そんときは俺が弱かった、対処できなかった、それだけだ!」
「それで、もしお前が死んだらどうすんだ!」
“死”。
それはソウヤが最も恐れる結果だ。
生物としてあまりに“正しい”言葉は、優しく穏やかな日本で生まれ育ったからこその人間だからこそ言えたもの。
相手が同じ“人間”なら、その言葉に止まったかもしれない。
けれどソウヤが相手にしているのは“妖精”で、“狂鬼”なのだ。
故に、ナミルは“正しい”言葉だけを並べるソウヤにイラつきを抑えられない。
剣戟を続けるソウヤとナミル。
全体的な戦闘力ならば完全にソウヤの方が何倍も上である。
けれど、今有利なのはナミルで不利なのはソウヤだった。
偏にその理由は、ソウヤに迷いがありナミルに迷いがないから。
“仲間を殺すかもしれない”。
その恐怖に囚われているソウヤと、純粋な殺意で斬りかかるナミルの大きな差だった。
「それがムカつくってんだよッ!」
「俺の言ってることの、どこがおかしい!?」
レーヌは離れた場所でお茶を啜りながら、呆れた表情をソウヤに向ける。
―ソウヤはナミルをちゃんと見てるようで、何も見ていなかった…。それに気付けばいいだけの話なのにね。
ナミルにはナミルの心情があり、ソウヤにはソウヤの曲げたくない根底部分
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