第4章
2節―変わらぬ仲間―
鬼は燃え狂い――
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決してやる!だから――」
ナミルが伝えたいことは決して仇を取るなどという、小さな事ではない。
伝えたいのは、もっともっと大事な事だ。
「――お嬢ちゃんはちゃんと兄貴を見てやれ!良いな!!」
その言葉を張り上げてナミルは元の仕事に戻っていく。
届いたかどうかは、この大量の集団が蔓延る中ではわからない。
だが、少女の近くに支えてくれる存在がいるのだと気付いてくれたら、ナミルとしてこれ以上嬉しいことは無いのだ。
それからしばらくして、“彼ら”はやって来る。
空を切り、風に乗り、光を照り、純白の魔物がやってきたのだ。
「何人いるんだ!」
「目視で7人です!!」
切羽詰まったように声を張り上げ始める兵士たち。
恐怖に怯えながら必死に首都へと入り込んでいく人々。
それを見ながら、ナミルは冷静に自身にある戦力と敵の戦力を計っていた。
―こちらが戦えるのは俺1人。相手は7人か…。
1体2体なら何とかなる。
だが、流石に同時7体となると多勢に無勢どころか戦闘になるかすら危うい。
そう思い至ったナミルは、しかし背中に担いでいる大剣を引き抜き人々の前に立つ。
「約束は、破れないからな」
中心に一線だけ空白があるその大剣は、歴戦の業物だと一瞬で周りの人々が理解した。
それと同時に、諦めかけていた生存への道に希望が宿っていく。
彼女ならなんとかなるのではないか…と。
期待の眼差しをその背中で受け止め、ナミルは見えないように顔に垂れる汗を拭う。
―何分、いや何秒耐えられる…?
天使との戦いは分単位ではない。
それこそ本当に1つ1つが秒単位で終わってしまう。
それほどに早く、瞬時に終わる戦いなのだ。
迫りくる極光、殺気、悪意。
それに対抗するためナミルは大剣を構え、精神を集中させる。
今までのナミルは、荒々しい殺気をただ相手にぶつけ力の限り振り回していた。
かつてのソウヤと全く同じように。
だが、今のナミルは別人だ。
体と大剣の刃が一対となったように、筋繊維1つ1つが刃と化したかのように研ぎ澄まされた殺気を噴出する。
考えるは目の前に迫る敵のことのみだ。
故に彼女は“狂鬼”と呼ばれる。
まるで狂った鬼のように、“鋭利な殺意”だけを向ける荒々しい戦鬼。
孤高に、気高く、そして時に荒々しく戦う彼女に着いていく者はいない。
当然だ。
ついていけばその身は鋭利な殺意に射抜かれ、身に纏う炎に焼き尽くされる。
――故に彼女は『狂い纏う鬼炎』ナミルと呼ばれた。
彼女は孤高に戦う。
そう、つい先ほどまでは。
「きゃぁぁ
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