第4章
2節―変わらぬ仲間―
姉の意地と弟の意地
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情も優しく緩んでいる。
レーヌはソウヤと額を突き合わせると、その瞳を見た。
純粋な黒で染められた瞳。
時に少年のように、時に青年のように、時に熟練の戦士のように輝く瞳は彩り豊かで見ていて飽きない。
「…私は大丈夫よ。後悔はしてないわ」
「そう、か」
俺では駄目なんだな、とその瞳が語りかけてくる。
レーヌは悲しげで儚げに揺れるその瞳を見て、一瞬胸がときめくのを感じた。
この瞳の感情豊かさに、どこか母性くすぐられるところにレーヌは惹かれてしまったのである。
―本当、馬鹿なんだから。
そう思って、レーヌは空いた腕でソウヤを抱きしめると耳元で囁く。
「――でも、ありがとう…ソウヤ。そんな貴方のこと、好きよ」
ドクン。
“好き”と囁かれた瞬間、ソウヤは心臓が跳ねるのを感じた。
それはきっと、罪。
あの日、あの時ルリとルビに告白されながらもそれに答えられなかったソウヤの罪だ。
この世界に来てからずっと感じていた心の悲鳴だ。
―後悔は、しないと決めただろう。
だからソウヤはその罪を、その悲鳴を受け止めて向き合う。
「期待するなよ」
「求めてないわよ。届かないと、知っているもの」
「そっか」とソウヤは少し悲しげに笑うレーヌに顔を近づけた。
一瞬だけ、唇が重なる。
顔が離れると互いに、互いの顔が赤く染まって見えた。
ソウヤは真剣な表情でレーヌを見つめる。
「だから…今の俺に出来るのは、これだけだ」
「――――」
困ったような、嬉しいような、怒ったような表情をしてレーヌはため息をついた。
それを見てソウヤは内心焦りだす。
―…あれ?間違った?
目に見えて困惑し始めたソウヤを見て、レーヌはもう一度小さくため息をつくと仕方なさそうに笑みを浮かべた。
「それで十分よ。でも、あんまりやらないでね」
「――――?」
レーヌは疑問符を浮かべるソウヤにもう一度デコピンを食らわせると、大きくため息をついて小さく…本当に小さく呟く。
「…したく、なっちゃうじゃない」
何が。
それを問うほどソウヤは…というより元々鈍感ではない。
気まずい空気が流れる中、ソウヤは片手で頬を叩いてレーヌを見た。
「とにかく、行こう。上空からなら早く移動できる」
「…えぇ、わかったわ」
とりあえずこの空気から逃れたい。
そんな両者の思いを嘲笑うかのように、しばらくの間甘ったるい空気は流れ続けていた。
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