第4章
2節―変わらぬ仲間―
姉の意地と弟の意地
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屈め――
「…あ、言うの忘れてたが」
「何?」
「舌、噛むなよ」
――瞬間、レーヌは体に凄まじい重圧が掛かるのを感じる。
体中が重圧に押され、目を開けていられずレーヌは気付かなかった。
「レーヌ、目を開けてみろ」
「え…?」
ソウヤの声にほだされて、目を開けたレーヌを待っていたのは視界一杯に広がる空と地平線。
頭が回るレーヌはすぐに自身が空中にいるのだと理解する。
だが、理解はしても受け入れられるものではない。
―今、私とソウヤは上空高くにいるのだ。
幸いソウヤの握る剣から風が巻き起こり、落下を阻止している。
だが、それでも恐怖や混乱などで自分の思考回路がショートしていくのをレーヌは感じていた。
「え?えぇ?」
「どうだ、びっくりしたか?」
目の前の景色がどうしても信じられずに、レーヌは呆けた顔で力の抜けた声を出した。
それを見てソウヤは笑い、今自分の身体に抱えている彼女が本当にただの人なのだと再認識する。
レーヌはいつも余裕のある姉のような存在だった。
時にはアドバイスを、時には説教を、いつも不敵な笑みを絶やさない…そんな人物。
だからこそ周りの人々やソウヤ達はレーヌを良く頼っていたし、レーヌも頼られていた。
“頼られる”。
それを慣れてしまった彼女は、逆に自分から他人を頼ることは無く多くの人から“凄い人”として認識されてしまう。
だからいつからか彼女は“人”と違うのだと認識されていたのだ。
レーヌは他の誰でもない、誰より“人”だ。
だから、きっと内に秘めたものは重いもののはずだから。
ソウヤはその『重み』を少しでも抱えたいと、心から願う。
――それが、今まで“人から向けられる感情”を背けてきたソウヤの償いだ。
上空高くにいるせいか、強い風が吹く中でソウヤはそっとレーヌの身体をそのまま抱きしめる。
いきなりの行動に、未だ思考回路が正常になっていないレーヌは更に頭がショートしていくのを感じていた。
「ちょ、ちょっと何してるのソウヤ!」
「――ありがとな、レーヌ」
風が強いせいで伝わりにくい中、ソウヤは顔を真っ赤にするレーヌの耳元にそっと言葉を掛ける。
それを聞いたレーヌは驚いた顔をして、すぐに言葉の意図を掴んだのか顔を緩め――
「あだっ!?」
――自由に動ける右手でソウヤの額にデコピンを食らわせた。
実に理不尽だといわんばかりに赤くなった額を擦るソウヤ。
それを見てレーヌは優しく微笑みかける。
「“弟”風情が、私に気を遣うなんぞ十年早いわよ」
「お前なぁ…」
クスクスと笑うレーヌに、ソウヤはなす術なくため息をついた。
だが、そんな彼の表
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