第4章
2節―変わらぬ仲間―
幻の海に映るのは――
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乱。
それらの絡め手はレーヌにとって最高の戦術と成り得るのだ。
だが、相手を殺すことに関してレーヌは全くの無知。
故に彼女は、“彼”の声を聞くのをずっと待っていた。
「――待たせたな」
不意に耳に通ったのは聞き慣れた――いや、聞き慣れない懐かしい声。
口調はぶっきらぼうの癖に、音色は優しく心地が良い。
少しだけ、最後に聞いた声より低くなっていた。
口元を緩めるのを抑えきれないレーヌは、不意に背中に現れた存在を小突く。
「遅いわよ、本当に」
「悪い、寝坊した」
そういって、ソウヤは剣を片手にレーヌの前に立った。
一目見て思ったのは、見慣れた羽がないことへの疑問である。
その次に、耳が尖っておらず丸くなっているのを見つけた。
―変わったわね、ソウヤ。
最後に会ったソウヤは、もっと不安気で不安定でアンバランスだったな…とレーヌは思い出す。
だが、今目の前に立つソウヤは違う。
不安気な雰囲気は、固く地面のように揺るがない雰囲気に。
不安定な心は、それを受け止めつつも前を向こうとし。
アンバランスな外と中は、1つになったかのようにしっかりと。
変わったのは外見だけではなく、全部だ。
―こういうのを、一肌剥けたっていうのよね。
それをレーヌは再確認すると、無言で腰に差した剣を抜くソウヤを見る。
「ソウヤ。この大陸にいる天使は、ほとんど目の前居る奴みたいにしておいたわ」
「了解。あとは止めを刺していくだけか」
と、ソウヤは止めを刺そうと歩みかけ…立ち止まった。
そして何か考えるように視線を右往左往させると、何故か申し訳なさそうに頭をかきながらレーヌを見る。
「悪いレーヌ、あの天使の幻解いてくれないか?」
「え?なんで?」
ソウヤは苦笑いすると、簡潔に今の自身の状態をレーヌに説明していった。
ある程度説明で今の状況を把握したレーヌは、大きくため息をつくと頭に手を当てる。
「あんだけ待たせといて、まだなのね貴方は…」
「本当に悪いとは思ってるさ」
本当に申し訳なさそうにするソウヤを見て、レーヌは大きくため息をついた。
きっと、ソウヤは自分では想像もできないような努力をしてきたのだろう…とレーヌも理解はしている。
その結果が今のソウヤだということも。
だが、これだけ苦労して待たせて“まだ”というのに、腹立たない理由もレーヌにはなかった。
とりあえずレーヌはこの感情を当てつけるつもりで、ソウヤの頭を杖で軽く殴る。
「いてっ!」
「痛いじゃないわよ、この馬鹿」
レーヌは杖を腰に差すと、そのまま頭を摩るソウヤに近づき軽く頬に口づけした。
カサついた肌と柔らか
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