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グランドソード〜巨剣使いの青年〜
第4章
1節―変わった世界―
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 どことなく、その顔は悲痛なものだった。

「この小僧の活躍は、私も耳が痛いほどようわかっとるから言える。コイツは無理のしすぎだよ。単純に引き金がルビらだっただけさね」

 それについてはエミアはよくわかっていた。

 瞬死の森を1人で踏破し、その後たった1人で『軍勢の期』を全滅、更に上級魔族も倒す。
 その後も何度も上級魔族と将軍魔族と相対し、仲間と共に全て壊滅。
 強敵と戦う際はいつもボロボロになり終わりには毎回気絶しているおまけ付きだ。

 これだけで、きっと普通の異世界人ならその背中に背負う命と使命感で押しつぶされて当然だ。
 だが、これだけでは終わらない。

 最果ての宮に閉じ込められ、脱出するために1匹の雑魚でも上級魔族や将軍魔族と同じくらい強い敵と何度も戦い殺した。
 そして、熾天使であるウリエルと戦い敗れながらも最終的に倒し、神に頼まれ”世界神”を殺す為に試練も乗り越える。
 また、最果ての宮を登る中で非常に親しくなり親友とも呼べる人と殺しあう。

 どれだけの心労をソウヤは背負っていたのだろうか。
 何度もボロボロになって気絶しながら人のために強敵と戦い、果てには親友さえもその手で殺す。
 そして神に頼まれ、世界神を殺すために今も強くなろうとしていた。

「あんな経験、おとぎ話の英雄でもやらないのですよ…」
「だからこそこの小僧は、ストレスに身が耐え切れなくなって意識不明になったのさ。逆に、今までよく持ったもんだよ」

 ルビはベッドの中で薄く光のない目を開いて、ぼーっとしているソウヤを見ると手を優しく包み込んだ。

「対処、法は…?」
「あるのです。でも、時間が少々かかるので今は無理なのですよ」

 エミアは申し訳無さそうにそう言うと立ち上がり、ルビの肩に手をおいた。

「わたしも今から準備を手伝ってくるのです。ルビさんは看病をお願いするのです」
「ん…」

 ルビは言葉少なく肯定すると、ソウヤの手を強く握りしめる。

 ―帰って、きて…。

 自身の必死の願いを、少しでも彼に届けるように。

「ユメ子さん。そちらの方は――」
「――終わってるよ」

 ユメ子は大きくため息を吐きながらそう言って、続ける。

「年寄りに徹夜なんて何考えてんだい」
「ごめんなさいですー」

 エミアは謝罪の気持ちを全く込めずにそう言うと、「まぁ、良いよ」とユメ子はその老いた顔に似合わない意地悪い笑みを浮かべる。
 そして顔を見合わせるとクスリと笑い合う。
 どうやら、2人とも冗談のようだ。

「じゃあユメ子さん、行くのですよ」
「はいよ」

 そうしてエミアとユメ子は部屋から出て行く。

 ふと光があたったような気がして、ルビはカーテンを開
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