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第九十話 狂乱の始まりです。
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ルーナと執務室にこもって束の間の休息を楽しんでいたジェニファーは不意に顔を上げた。そしてヴァルキュリアの司令官公室から見える漆黒の宇宙を見つめていた。まるでその先にある何かを注視し、耳を傾けようとしているかのようだった。
「ジェニファー。どうしたの?」
あらぬ方を見ているので、イルーナがどうかしたのかと尋ねた。
「失礼。何か・・・そう、呼ばれたような気がしたの。そんなはずはないのだけれど。」
「誰に?」
ジェニファーは少し苦笑したっきり何も言わなかった。凛としている彼女にしては珍しい事なので、重ねてイルーナが尋ねてみると、
「ティファニーから呼ばれたような気がしたのよ。あの子と私は前世では師弟関係だったから。自由惑星同盟に転生して、シャロンの下で苦労していなければいいけれど。」
「それは無理な話だわ。シャロンの性格はあなたもよく知っているはずよ。たとえ自分の教え子であろうとも不必要であれば即座に切り捨てる人間なのだから。」
「だからこそ、あの子の事は気にしていたいのよ。イルーナ。」
ジェニファーは即座にそう言った。
「そう、たとえシャロンの下にいても何をしていても、元教官としては教え子の事は常に気にするものだという事よ。残念ながら・・・シャロン自身には当てはまらないけれど。ティアナが不憫だわ。」
期せずして二人は同時に黙り込んだ。シャロンの教え子であるティアナはもはやシャロンの事を気にしていないと声を大にして言っているが、その実は違うだろうと二人は思っている。前世での師弟の絆という物は少なくとも普通の感情を持ちうる人間にとっては、そしてよほど互いを嫌いあっていなければ誰しもが強く抱くものだから。
「もし、自由惑星同盟に侵攻することになれば、ティファニーと正面からまた戦うことになるわ。」
「それはわかっているわ。それでも彼女を助け出す機会があればそれを掴みたいと思っているの。それはあなたもでしょう?イルーナ。」
言外には言わなかったが、かなうならばシャロンを倒すのではなく止めたいという思いをこの2の参謀総長が抱いていることをジェニファーはよく知っていたのである。
「かなうならば、そうしたいわ。」
本音はあまりにも小さな声であまりにも頼りない吐息と共に吐き出された。その可能性が限りなく零であることを彼女たちはよく知っていたからである。



* * * * *
3日後――。

シャロンは地上車で評議会議場に赴いていた。そして今その優雅な姿を参考人席に見出すことができる。
「アーレ・ハイネセンの建造にいったい我が同盟市民の血税がいくら投入されたか諸君らはご存知か!?」
革新派の野党議員が壇上で叫んでいる。
「正確な数字をなぜか財務委員会も軍部も公表しないのだが、ある筋からの資料を基に試算すると約1兆ディナールに
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