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ラインハルトを守ります!チート共には負けません!!
第九十話 狂乱の始まりです。
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そして明日の事も知っている。でも、あなたは今、この瞬間に起こりつつあることについては認識できていない、と。」
冷たい声と視線はヤン・ウェンリーをたじろがせるに十分だった。ただ、彼は頭を掻いただけでそれ以上の反応は示さなかった。
「私は万能ではありませんよ。ましてや神ではないのですから。」
「ええ、知っています。でも、時として誰しもが誰かを頼りたい時はある。その時、頼る相手が頼りがいがある方に手を求めたくなるのは人間の本性ではないかしら。」
だからと言って、何もその役目を私に求めなくてもよいのではないでしょうか。そうヤンは言いたかったが、ウィトゲンシュティン中将の瞳の奥に浮かぶ表情に気が付き、それを口に出すのはやめにしたのだった。



ティファニー・アーセルノ中将は新設された艦隊司令官という事もあり、異動はなかったが、大打撃を受けた第十六艦隊はその再編成の必要から当面は首都星ハイネセンから動けないこととなったのである。ヤンたちが統合作戦本部長室で話をしていたその同時刻、ティファニーは極低周波端末でシャロンと会話をしていた。
「閣下、よろしいのでしょうか。敗戦の責任は敵の圧迫を防ぐことができなかったこの私にあります。ですのに、閣下御自らが評議会に出向かれるなどと――。」
『私はあなたを庇うために赴くのではないのよ、ティファニー。』
シャロンはティファニーがかすかに胸の奥に抱えていたであろう淡い思いを切り捨てた。
『そろそろ裏で糸を操り続けるのも飽きてきたの。帝国ではラインハルト・フォン・ローエングラムが台頭し、イルーナたちもそれに追随する形で地位を得てきている。すでに帝国全軍の半数を掌握したそうね。だから私も動き出すの。それだけの事よ。』
「ですが、並大抵の事では評議員たちを、市民を納得させるのは難しいと思います。」
『私が並の転生者であればね。』
シャロンは微笑した。
『私たちがどういう力をもってここに転生してきたのか、それをもう一度思い出してみなさい、ティファニー。』
ティファニーは答えなかったが、背中にじっとりと汗がにじむのを感じていた。そう、シャロンがもし本気になればその時は――。
『私たちにはこの世界における『現実』という法則が適用されないことを、思い知るがいいわ。この世界に生きる人間、そして、転生者たちは。』
シャロンが微笑しながら通信を切った時、ティファニーはどっと椅子に座りこんでしまった。
「私は・・・とんでもない思い違いを・・・・どうして・・・・・。」
彼女は両手で顔を覆った。
「どうすればいいの?私は・・・・フィオーナ・・・ティアナ・・・・。そして、ジェニファー教官・・・。私は・・・・・私は・・・・!」
彼女のかすれた声は官舎の無機質な壁に当たって消えた。



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