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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
三十二話 回答
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た。そのこともあってそう言ったミゲルの顔を、セルジオは不思議そうな顔で首を傾げて覗き込む。

「ユダン……?」
そうだった、別の世界で育ち、こちらに来てからも練習と試合に多くの時間を割いてきたセルジオはまだこの世界の常識や一般的な名詞にも疎い、少し考えて、ミゲルは言い直した。

「そうだな……相手を、弱いと思うな、と言うことだ」
「弱い……ン!わかっタ!思わなイ!」
頷いてそう言うセルジオは、笑顔で続ける。

「弱いって、思ったことなイ!モリのエモノも、みんなつよかっタからナ!」
「……そうだな、その意気だ」
そうだ、そんな心情が、彼に在る筈もなかったと、今更になってミゲルは思い直した。少なくとも彼がこれまでに経験してきた「戦い」と言う戦いは全て、「命」を取り合う、本当の殺し合いであり、その血肉と共に、彼は生きてきたのだ。そんな甘えた感情を、彼が戦いに持ち込む余地はない。

「それにせんせー!ミウラも勝った!」
「ん?あぁ、そうだな、あの八神道場のお嬢さんは見事だった」
つい昨日の事、映像ごしに見たセルジオと共に練習をした少女の映像を思い出して、ミゲルは一つうなづく。彼は一度背を向けて体の調子を確かめるようにピョンピョンと跳ねると、振り向いてニカリと笑った。

「だから、オレも勝つゾ!!」
「…………」
少しだけ、ミゲルは驚いていた。セルジオが、自分の戦い(しあい)の前に“誰か”の事を引き合いに出したのは初めてだ。この世界の人々との交流を経て、少しずつ目の前の少年の中にも何かしらの変化と思う所があるのだろう。

「マルティネス選手!入場をお願いします!」
「ヨッシ!」
「…………」
「?せんせー、どーしタ?」
「ん?いや、何もない、なら、行くとするか、セルジオ!」
「おウ!」
言うが早いが、セルジオは首元のネックレスを掴んで叫ぶ。

「ハグラー!」

────

「……セットアップ」
「セットアップ!!
二人の少年が、ほぼ同時に叫んだ。

[Ja!!]
[Set.]

────

「ナカジマちゃーん」
「ん?あれ、ミカヤちゃん、今来たのか?」
手続きが一息ついて、次のクラナの試合まで少し時間の空いたノーヴェがウェンディ達とチビーズを探していた時、不意に後ろから声がかかった。階段の少し上の方に、ミカヤ・シェベルが手を振っているのが見え、歩み寄る。

「やぁ、大学で少し用事かあってね、しかしおかげで、ヴィヴィオちゃんのお兄さんの試合を見逃してしまった」
「あぁ、オッケー、後で録画見せるよ」
ミカヤとノーヴェは色々とあってちょっとした友人だ。ノーヴェの方か腹チビーズのスパーリング相手を頼むこともあるし、ミカヤはミカヤでそのスパーリングを利用して近接格闘戦対策をしていた。
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