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魔法少女リリカルなのは ViVid ―The White wing―
第三章
三十二話 回答
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言葉は出ない。その髪を梳こうとしても、触れるために手が動くことすらない。ただの短い受け答えに喜ぶヴィヴィオの様子に、どこか違和感を覚えたらしいリオとコロナと、クラナの間に重たい空気が流れ始める、その時だった。
「あ、そっス、ヴィヴィオ」
「?」
不意に、座って様子を見ていたウェンディが悪戯っぽく笑う、その続く言葉に、クラナとヴィヴィオの二人が同時にギョッとした。
「クラナの隣に座ったらどっスか?」
「え」
「ふゃぁ!?」
クラナが思わず声を漏らすのと同時、ヴィヴィオの口から凡そどこから出したのかさっぱり分からない奇妙に裏返った声が上がる。しかし不意を打たれた二人をよそに、ちびっ子二人の反応は早かった。
「あ、そうだよ!」
「ほら、ヴィヴィオ!」
「うぇ!?ち、ちょと、コロナ!?リオ〜!?」
「…………」
丁度クラナが座ろうとしていた隻の隣に、二人がヴィヴィオを連れてくる……というより、押し込んでくる。一本道で逃げ場のないまま後ろからぐいぐい押されたヴィヴィオは、つんのめるようにクラナの前に叩きだされると、真正面から兄の瞳と向き合い、視線を数瞬泳がせたあと、おずおずと問うた。
「あ、あの……隣に、座っても、いいですか?」
「…………」
お前はバスで知らない人の隣に座ろうとする人見知りの少女か。と突っ込みたくなるのを何とか飲み込み、クラナは彼女から視線を逸らして自席に座る。その仕草に、無視されたと感じたのだろう。ヴィヴィオの視線が地面へと下がるが、その瞬間……
「……好きにしろ」
「へ……?」
聞き返すようにヴィヴィオがクラナを見る。しかし彼は答えないまま、隣の席に置いていた水筒をそっと足元に下ろした。
「……!う、うんっ!」
高速で三回も頷いて、彼女はクラナの隣へと座りこむ。試合であれだけ動いたせいか、あるいは服にしみこんでいるのか、隣に座る兄からはうっすらと汗のにおいがした。その匂いに何だか甘いようなくすぐったいような感じがして、ヴィヴィオは小さく微笑む。
彼らの司会の外でリオとコロナがなんとも嬉しそうにハイタッチしているのを、ディエチとウェンディとアインハルトは微笑ましく想いながら見ていた。
「あれ?そう言えばクラナ、ライノは?」
「あぁ、彼奴は……」
ディエチの問いに、クラナが少し遠くを見る。その方向に視線を向けると、少し離れた観客席にクレヴァーと共に座るライノが見えた。
「あ、レイリ―選手!」
「ホントだ!そっか、そう言えば同級生って……」
「クラナ先輩もなんですよね?」
「……あぁ」
本当を言うと、自分も向こう側で見ようと思っていたのだ。しかし、ライノに殆ど強制的にこちらに来るように押し込まれてしまってはどうしようもなかった。どうにも彼の思惑に乗ってしまった気が
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