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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第二十九話 黒鐘を知る日
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 居場所がない。

 そう思って、喪失感から抜け出せなかった黒鐘は、両親のお墓参りに行ったとき、ある人と出会った。

 一人の女の子だった。

 黒鐘と同い年くらいの女の子は、黒鐘の両親の訃報を聞いてお墓参りに来てくれたのだという。

 どういう関係かと黒鐘が問うと、少女は懐かしむようにこう話したそうだ。

「わたくしがお母様のお腹にいた、産まれる前のことなのですが、魔法犯罪者に人質に取られてしまった時、あなたのお父様に助けていただいたとお聞きしたものですから」

 それは黒鐘が知らない、父の物語。

 管理局で優秀な魔導師として活躍していた父が助けた人の娘。

 彼女の存在は、黒鐘にとって衝撃的なことで、同時にあることに気づかされることだった。

 ――――誰かの為に生きた人は、色んな人から想ってもらえる。

 そして、そんな想いは語り継がれて、本人が亡くなっても生き続けるのだと知った。

「お母様の分も込めて、感謝いたします。 本当に、ありがとうございました」

 深々と頭を下げる彼女を見て、黒鐘の中に小さな決意が生まれた。

 自分は生きてる。

 それは家族の犠牲の上にあるものなのか、それとも誰かの想いなのか、それは分からない。

 だけど、自分にできることがあって、それをしないのは、亡くなった家族が喜ばないことだ。

 目の前にいる少女も、命の恩人が亡くなって悲しくなっても、前を向いて生きている。

 ならば自分は?

 両親の死、眠り姫となった姉。

 事件のこと、生き残った自分。

 まだ、分からないことが沢山ある。

 明らかにしないといけないはずだ。

 自分のために。

 そして、誰もが納得するために。

 ――――両親の死を。

 小伊坂 黒鐘は後、管理局の嘱託魔導師として、様々な事件に関わっていくことになる。

 全ては自分の身に起きた事件の真相を知るため。

 犯人を見つけるために、彼は魔導師としての道を進みだした。


*****


「――――つぅのが坊主の身に起こったことだ」

「そう、だったんですか……」

 言葉に詰まったのは、お話しの重さからなのか、ずっと黙っていたせいなのか分からない。

 だけど、私達のいるこの空間は、言葉にならないような重苦しさが立ち込めていて、頭がぼぉっとして浮遊感を覚える。

 それはまるで、ここが現実じゃないんじゃないかって思うような、そんな感じ。

 病室に響く電子機器の機械音だけが、ここが現実だと思い知らせてくれる。

「黒鐘がご両親を亡くしているのは聞いてた。 ……けど、改めて詳しく聞くと」

「辛いか?」

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