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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第二十九話 黒鐘を知る日
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 母からは家事を模倣することで、一人でも生活できる技術を身につけたが、模倣だけでは完璧にならない料理だけは完璧にはならなかった。

 しかし魔導師としての吸収力は目を張る物があり、将来有望な黒鐘の姿を見た父は、ある道場へ黒鐘を預けることにした。

 それが逢沢 雪鳴と逢沢 柚那の実家がある第54管理内世界『クレアスペアーレ』・中央国/ドゥーブリズだった。

 ドゥーブリズでの日々は逢沢姉妹の話しの通り、逢沢姉妹の父であり、道場の師範を務めていた逢沢(あいざわ) 剣征(けんせい)に剣術を教わっていた。

 逢沢姉妹が知らないこととして――――その時には海嶺が完成させたデバイス/天黒羽(姉と同じアマネと呼ばれる)を受け取っており、しかしまだ思うように扱えなかったため、剣術を学びつつアマネを使いこなせるようになろうと言う父の思惑があった。

 黒鐘が開花させた『模倣』と言う能力は、細かく言えば相手の動作でどの筋肉や神経が、どの程度の力加減やバランスで動いているのかを目で見て理解し、自らの身体で再現する能力。

 逆に言えば、黒鐘の身体で再現できない動きは、理解できても再現できないと言う弱点があったことを黒鐘は剣征のもとで知る。

 弱点克服のために努力しつつ、剣征の娘である雪鳴と柚那の二人との交流を深めていったことは、逢沢姉妹の話しからも分かることである。

 彼の戦闘スタイルの基礎はこの道場で培ったものであることは、本人も語っていた。

 それから半年が経過し、黒鐘は実家に帰省し、久しぶりの家族との時間を過ごす。

 ――――その日の夜、小伊坂 黒鐘の人生を一変させる事件が起こった。

 黒鐘の両親が魔導師の襲撃を受けて死亡。

 海嶺と黒鐘が意識不明の状態で発見された。

 事件の詳細について、管理局が得た情報は極めて少ない。

 犯人の数や目的、海嶺や黒鐘が意識不明で発見され、黒鐘だけが意識を取り戻せた理由など、様々なことが不明。

 唯一、意識を取り戻した黒鐘すら、当時の記憶が曖昧で事件直後の出来事を何一つ覚えていなかった。

 医師からの話では、事件のことをショックが強すぎたあまり、本能的に思い出さないようにしようと記憶を封じ込めている可能性があるらしく、事件は現在も謎の多く残したまま捜査が続いている。

 真実は一つも明らかにならず、家族を一夜にして失った黒鐘は、両親の親戚関係にあったリンディ・ハラオウンのもとで過ごすことになった。

 新たな家族との生活は、しかしリンディとクロノ共に忙しい身であったため、家族として一緒に過ごす時間というのは少なかった。

 家族というよりは、お友達の家にお泊りしている程度の気分で、自分の部屋を用意してもらってもどこか落ち着かなかった。

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