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魔法少女リリカルなのは 〜最強のお人好しと黒き羽〜
第二十九話 黒鐘を知る日
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こにでもいる普通の男の子として生まれた。

 両親が面倒を見る時間よりも、姉の海嶺と過ごす時間が多く、日常生活のほとんどを海嶺の側で過ごした。

 その影響か、海嶺も黒鐘もお互いに対してとても甘い性格になってしまい、子供らしいイタズラややんちゃなことも二人で一緒にしてしまい、怒られる時ですら一緒だった。

 二人は、二人で一つの存在なんだと思えるほど一緒にいて、互いを愛し合っていた。

 変化は四歳と半年を迎えた頃に、黒鐘が見せたあることがきっかけだった。

 それは何気ない、子供の無邪気で何となくの行為だっただろう。

 ある日、両親共に家を空けており、海嶺と黒鐘の二人で留守番をしていたときのこと。

 夕飯まで時間があったが、お腹を空かせた海嶺を見た黒鐘は、四歳にも関わらず一人で調理を始めたのだ。

 もちろんそれを海嶺は止めたし、包丁や火を使う作業だから危険だと警告もした。

 しかし黒鐘は海嶺の警告を無視して調理を始め、そして完成させた。

 料理を少しでもやったことがあれば誰でも作れるカレーライスだったが、それを作り上げた黒鐘に海嶺は大層驚いたらしい。

 それもそうだ。

 黒鐘はその時まで料理はおろか、包丁を握ったこともない素人だったのだ。

 調理器具の使い方、火の使い方、材料の種類や切り方、お米の研ぎ方や炊き方。

 大人からすれば単純なことで、子供からしたら複雑で危険なそれを、彼は当たり前のように、慣れたようにこなしてみせたのだから海嶺は驚きを隠せなかっただろう。

 お皿に盛って食べて見ると、母ほどは劣っていたが、食べるには十分な味付けに仕上がっていた。

 驚愕の中、海嶺はなぜ作れたのか聞いたところ、黒鐘は、

「お姉ちゃんが大好きだから!」

 と無邪気に答えるが、それはもちろん理由になってないので(だけど嬉しすぎて照れた)再度聞く。

「カレーなんて作ったことないでしょ?」

 聞きたかったことを問うと、再び彼は当たり前のように、そして無邪気に答えた。

「お母さんが作ってるところ見てたらわかるよ?」

「――――っ!?」

 その回答によって海嶺は、黒鐘が持つ才能に気づくことになり、そしてそれをもとにデバイス――――現在のアマネが作られることになった。

 見ただけでそれを再現できる力――――模倣――――こそ、小伊坂 黒鐘が持つ才能だったのだ。

 それから黒鐘は多くのことを経験し、模倣していくことで成長していった。

 その中から黒鐘が興味を示したのは、父と同じ魔導師としての道だった。

 魔法を使うこと、魔法を用いて戦うこと。

 黒鐘はそれに興味を示してから戦い方を父、魔法の使い方を海嶺から模倣するようになる。

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