柔と剛
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雪羅は親指を胸の中心に突き立て、小突いた。少し間を置くと、車椅子をシューの方向に向けて僅かに揺らぐ瞳に問いかけた。
「お前、『狭心症』だったのか?」
「ッ!・・・」
「いつからだ?なんて事は聞かねぇよ。そんなことよりも言うことがある」
身震いするシューのことを尻目に雪羅は真剣な眼差しで言った。
「すぐに手術を受けろ。ついでにエイズの女の子も一緒にな」
「そんなの・・・」
「できないとは言わせねぇぞ。お前も知っているはずだ、時間がないことくらい。それとも・・・」
有無を言わせない言葉に更に追い討ちをかけるように続けた。
「まさか殺人鬼の血が混じることを躊躇ってるんじゃねえだろうな?」
その瞬間、雪羅の身体は僅かに宙に浮いた。シューが彼の胸ぐらを掴み、持ち上げたからだ。髪で隠れた盲目の左眼には光が戻り、歯茎を剥き出しにした歯は、軋む音がたつほど食いしばっている。
その姿は普段の彼とは正反対のもので、さながら獣を彷彿とさせるものだった。
「テメェ、聞いていりゃあ好き勝手言いやがって!」
「・・・やっと出て来たか。久しぶりだな、口の悪さは相変わらずか」
豹変したシューに雪羅は驚く素振りも見せずに淡々と話した。
「バーデン・・・」
雪羅がSAOで対峙したプレイヤー、《霧のバーデン》がそこにいた??????
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これは遠い過去、SAO時代に遡る。
シュタイナーというプレイヤーは良くも悪くも平凡。攻略組に属する有名どころのプレイヤーとは違い、静かにひっそりとした生活を送っていた。
しかし彼には裏の顔があった。いや、正確にはもう一人の自分と言った方が正しいかもしれない。
解離性同一性障害、俗に言う多重人格に似たものにより《バーデン》という身を下ろし、シュタイナーは数々のレッドプレイヤーをその手で葬ってきた。
《霧のバーデン》と呼ばれる所以となったのは彼が《バーデン》と《シュタイナー》の人格を入れ替える際、その姿すらも変化してしまうため、さも現場から霧の如く消えるように見えてしまうためでもあった。
W柔WとW剛W??????
二人は一人の身体に宿り、数多の罪人を葬り、共に歩んできた。お互いのことなど嫌という程分かっていたはずだった。しかし、限界がきた、シュタイナーの精神が弱り始め、それによって今まで保たれていた均衡が崩れ、二人の精神が引き裂かれそうになっていた。半分意識が無くなり、廃人になる寸前だった。ちょうどその頃スパイとして潜入していた《ラフィン・コフィ
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