第3章
2節―”神殺し”を追い求めて―
出発前日
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を忘れられずに居た。
そうやって苦悩していると、不意にドアをノックする音がソウヤに聞こえる。
どこか控えめなノックで、相手を心配しているような優しいものだ。
「ルリ、か。どうした?」
ノックの音だけで誰かを判断できるのは、長い間共に歩んできた仲間故の特権だろう。
恐る恐るという風にドアを開けたのは、ソウヤの言うとおりルリだった。
ただ、その顔の上にルビの姿もあったが。
「ん。私、も…いる」
「――どうした、2人共」
出来る限り、悩んでいる表情を消して優しげにソウヤは2人に聞く。
音を立てないように部屋に入ったルリとルビはソウヤの前に立つ。
「私、と…ルリで、決めた」
何を決めたのだろうか…とソウヤは首をかしげる。
「え、えと。大事な話があるんです、ソウヤさん」
大事な話。
そう言われては聞かざるをえないと思い、ソウヤはルリ達と同じように立ち上がった。
静かに、ルリとルビの瞳を見つめる。
ソウヤの目に映るルリとルビは、どこか頬が赤いように思えた。
ルリとルビは互いに視線を交わすと、小さく息を吸ってソウヤを見つめ、言葉を紡ぐ。
「――好きです」
ドクン。
ソウヤは、無意識に両手に力が篭もるのを感じた。
「ソウヤ、貴方のことが――」
ドクン。
喉がカラカラになって、動悸が早くなる。
「――大好きです」
ドクン。
身体中に、血液が回るのを感じた。
―俺は、どうしたら良いのだろうか。
回り切らず、でもどこか冷静な頭でソウヤは考える。
―俺は、ルリとルビが好きではある。
それだけではない、エレンやレーヌ。
ナミルも好きだ。
―でも、それは”恋”なのだろうか。
わからない。
頭が痛い。
心臓も痛い。
”エレンやルリ達は必ず封印する者となるじゃろう”。
ギルティアの言葉が、ソウヤの胸に突き刺さる。
”――ソウヤ、貴方のことが大好きです”。
胸を焦がすような想いが、ソウヤを襲う。
”与えられた力”という劣等感とそれを使うという行為に、どうしようもなく胸が苦しくなる。
どれだけ努力しても、救えるのは自身と異世界人だけというのが申し訳ない。
封印に身を捧げ、人生を投げ出すルリ達を救いたい。
今の今まで、ソウヤの心にのしかかってきた全ての負担。
”強者”故の責任。
”与えられた力”の虚しさ。
努力してきた者を嘲笑う力を持ったことの心苦しさ。
自身を偽るストレス。
仲間の信頼の重さ。
自身の思惑を一切無視する流れ。
”神殺し”という大罪を起こすという恐怖。
――
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