第3章
2節―”神殺し”を追い求めて―
説得
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長》な頭があった。
中途半端な体があった。
中途半端な考え方をしていた自分がいた。
「でも、違った。俺は努力をしていなくて、それを周りのせいにしてただけだった」
いつの間にか、力の抜けていた深春を退けソウヤは手を空へ伸ばした。
その手は自身の知らぬ間に大きく、角ばった剣士の手に成り果てている。
「もう、遅いだろうけど…俺は、俺は謝りたいんだ」
手を握りしめて、そうソウヤは決意を口に出す。
それをほけた顔で見ていた深春は、不意にソウヤの顔を見る。
「本気…なんだね」
「あぁ、”努力”していなかっただけなんて、この世界に来て気付かされた」
この世界ではソウヤは、強者だった。
その気になれば、この世界中を敵にしても無傷で滅ぼせるにまで強くなれることが約束されたような強者だったのだ。
だが、そんなソウヤでも初めは誰かが追いつこうとしたら簡単に追いつける強さだった。
きっと、初期の頃より強い奴なんて今ではゴロゴロ居るだろうとソウヤは思う。
世界を軽く滅ぼせるだけの力。
それはソウヤは一日之長の才能を持っていて、なおかつ強くなろうと努力したからこそ手に入れられたものだ。
初めはステータスをあげようとスキルの向上を優先させた。
最果ての宮に来てからは、ステータスだけでは倒せない敵も居ると考え直され技術を鍛えた。
だからこそ、今のソウヤが居る。
「俺の取り巻く世界は地獄なんてもんじゃないさ――」
ソウヤはそう言い、小さく口を開けて今の気持ちを吐露する。
「――天国だ」
人並み外れた才能があって、それを極度に期待せず優しく包み込んでくれた親が居て、調子にのっていた俺を叱ってくれる奴がいて、不貞腐れた俺を慰めようとしてくれた奴が居た。
――どれだけ、俺の世界はいいやつばかりなんだろうか。
「私にはわからない」
「知ってるさ、別にお前も元の世界に戻すなんて一言も言ってない」
「えっ…」と深春は驚いた表情でソウヤを見る。
それを見たソウヤは寝転がっていた体を起こして深春を見た。
「俺の願いは1つ」
「……うん」
「俺の願いは、ウィレスクラを倒して”元の世界に帰りたいやつだけ返してもらう”。それだけだ」
「つまりは、だ」とソウヤは大きく伸びをする。
呆然と見上げていた深春にソウヤは――
「俺があの勝負で勝った瞬間に、説得は成功してたんだよ」
――珍しく大きく無邪気な笑みを浮かべた。
それを見て、深春は馬鹿らしくなる。
ただ、それを言うだけなら別に勝負なんてしなくて良いはずなのに…と。
深春はそう思って、すぐに訂正した。
―きっと、後悔しないために公正
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