第3章
1節―最果ての宮―
100層 ―中編―
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明るくなる。
その光の束はルビの手から発せられていた。
この状況をソウヤたちは狙っていたのだ。
初めに巨剣による薙ぎ払いを行えば、そのリーチゆえに後ろに下がるという手段は選べない。
その際ウリエルに選べるのは2つのみ。
跳躍を選べばルビの魔法が襲いかかり、そちらに一瞬でも注意を引かせれば、その隙を利用してもう一度薙ぎ払いを行う。
そこで体制を崩した状態であるウリエルは1つしか選べない。
また、跳ね返すことを選べば今の状況が作られるのが早まるだけである。
目の前に迫る魔法を見てウリエルは――
「…やっぱり、貴方達本当に楽しいわ」
――炎を一気に噴出させ、魔法も巨剣も一気に退けた。
それを見たソウヤは冷や汗が流れるのを感じる。
―さすがに簡単には行かないよな…。
チラリとルビに視線を向けると、ルビも動揺のことを思ったようで頷いた。
―なら…この一撃に掛けるしか無い…!
ソウヤは後ろに大きく下がると、ルビが逆に前に出る。
まさかそう来るとは思わなかったのだろう、ウリエルは驚いた顔を見せた。
「…時間稼ぎかしら?」
「――ソウヤには、触らせない」
ルビはそう言うと、右手に着けている籠手を外す。
金属とは思えない軽い音が部屋に響いた。
そして――
「――『魔貴解放』」
この世のものとは思えないほどの濃密な魔力が吹き荒れる。
それは目の前に居るウリエルと同等とまでは行かないが、それでも目を疑うほどの魔力の量と質だった。
「貴女、やはり――」
ウリエルの問いにルビは小さく頷いた。
「私は魔貴族…。もっと詳しく……王の御身、守る騎士。その娘」
魔族の王。
それは誰にでも予想はつく。
このルビこそ、魔族の王…つまりは魔王の側近の騎士。
人でいうところの近衛騎士の娘である、吸血姫なのだ。
「魔族の…しかも高位の魔族が人と慣れ合うなんてね」
「ソウヤは…私の、恩人。だから…助ける――!」
無詠唱で創りだされた無数の結晶のエネルギーの束。
それは、魔貴族として覚醒状態にあるルビだからこそ出来る芸当。
「二重詠唱…」
ウリエルが関心したように呟く。
本来、人は1つの物事しか考えられない。
複数の物事を考えようとすると1つ1つの思考が曖昧になるからだ。
それは脳が焼き切れないためのリミッターであり、そこまでの思考演算を人は出来ない。
だが、この”世界”では違う。
高位の魔法使いになればなるほど、複数の物事を考えるのが苦ではない。
それは魔力によって脳が補強され、なおかつ無意識に擬似的な脳を高
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