第3章
1節―最果ての宮―
95層―後半―
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ろうという、確かな思いを秘めながら。
エルトが力を抜き、剣先を地面に当てると…剣が増える。
「十刃」
刹那より僅かな時間の間に、10回連続斬りを行う世界の誰を探しても行うことは出来ないであろう技。
それは確かにソウヤに向かって突き進む。
ソウヤは迫り来る10の刃に身をかがめると、目を閉じる。
初めに景色がなくなり、次に色がなくなり、次に音がなくなり、次に匂いがなくなり、最後に感触がなくなる。
完全孤独の世界に入り込んだソウヤは、自らの中へ思考を深めていく。
そこに1つ。鎖が合った。
それは雪無の鎖であり、ソウヤ自身が自ら繋げたものである。
今、それを解き放つ――。
岩が砕ける音がして、ソウヤの姿がエルトの視界から消えた。
エルトはその反射神経で対応しようと感覚を鋭くするが…分からない。
そう、つまりソウヤはエルトの反射神経を超える速度で移動したのだ。
―どこに行った…?
僅かな時間で思う思考。
ただ、それはただの隙を作る要因としかなりえなかった。
気づけば真っ二つになっていた。
首と胴体が離れていく。
痛みはない、きっと麻痺している。
地面に転がったエルトの顔は、ソウヤの手に持つ剣を見て納得した。
―王剣…か。
その手に持つ剣は、今までの無骨な剣と違い金の装飾も僅かながらされていた。
きっと、知っている人ならばこう思うだろう。
エクスカリバーのようだ…と。
―あぁ…。良かった。
エルトは安堵の溜息を内心でつく。
もう、眠気がすぐそこまで迫っていた。
だが喜ばずにはいられなかったのだ。
”自らと闘うことで成長してくれた”ソウヤを。
首から上だけのエルトの目から、一筋の涙が零れ落ちる。
ソウヤの大きな背中を見ながらエルトの意識は闇に落ちた。
エルトが死んだ後、すぐに雪無がいつもの無骨な剣へと変化した。
あの時、ソウヤが切り札として使ったものは近衛剣となってから現れた、『王剣化』というものである。
数瞬のみ近衛剣である雪無を王剣にすることが出来るものだが、使った後はソウヤであっても魔力がカツカツになるので、使わなかったのだ。
「ぐっ…!」
「ソウヤっ!」
力が抜け、身体中に痛みが走る。
『王剣化』と『亡霊解放』の副作用が現れたようだ。
そのまま地面に倒れようとした時、ルビが駆けつけ身体を抱きとめる。
ただ、ソウヤは意識が闇に落ちていくのをかんじた。
そして意識の闇に落ちていくその数瞬前、ソウヤは――
―頑張るから、エルト。
――新たな誓いを込めていた。
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