第3章
1節―最果ての宮―
95層―後半―
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を突く。
自らの手を空に向けてソウヤは叫ぶ。
「――エア!!」
手のひらに目に見えるほどに濃密な風の塊ができた。
それを即座に破裂させると…破裂した逆方向へソウヤの身体が吹き飛んだ。
「――ッ!!」
舌を噛まないように、ソウヤは痛みによる声を口を噛み締めて留める。
地面を大いに削りながら勢いを殺す。
ソウヤは立ち上がると、左手を後ろに向ける。
「…エア」
一瞬風の塊が見えたかと思うと…ソウヤの身体が消えた。
エルトの目にソウヤが映らず、目を大きく開ける。
―後ろ…いや、下っ…!?
エルトはその場に剣を咄嗟に突き立てると、金属の甲高い音が響き渡る。
地面スレスレに身体を近づけて蜘蛛のようにエルトに攻撃しに行ったのだ。
それを気付けたエルトの反射神経の高さは、ソウヤ並である。
剣裁が響く。
1回1回の剣の軌跡が伸びるたび、互いの剣の練度は、速さは高くなっていく。
剣裁が響く。
すでに30分以上打ち合っており、今は鈍鉄色の軌跡が僅かに見えるのみである。
エルトが瞬時に3回連続切りを行う。
凡人から見れば3回同時斬りにも見えるその剣撃、ソウヤにはただの連続斬りに見えていた。
1つ1つ確実に交わして、そのわずか…針に糸を通すより僅かな隙をソウヤは一点の狂いもなく突き通す。
その剣はエルトの胸を容赦なく突き――
「ガル」
――その1辺1pにも満たない小さな土壁により、一瞬の隙を塞がれた。
刹那遅れた剣先がエルトの剣によりかわされる。
その後、考えたことは両者とも同じだった。
「「ファイ・ソーガ!!」」
左手の空いた手のひらに炎の剣が形成され、それがぶつかり合う。
火山に居るのかと言いたくなるほどの熱風が周りを焦がした。
炎剣の残り時間が迫っているため、ソウヤとエルトは同時に後ろに下がると初めて立ち止まる。
「――ずいぶん、強くなったね」
「あぁ…そう、だな」
エルトはクスリと優しげな笑みを浮かべると、その無骨な剣を構える。
その構えを見ずとも、ソウヤは何をやりたいのかしっかり伝わっていた。
「にしても、成長が早くて驚いたよ」
「剣術、王級だからな」
互いに笑みを浮かべると、目を閉じた。
嵐の前の静けさが訪れる。
「『我…強き者…。我の導きに答えよ…。我…弱き者を守る者…。我の言葉に答えよ…。我…』」
「『我は竜。身体は最強の鋼。血は赤く燃え盛る。人々は怯え、恐れ、崇める…』」
静かに、詠うように、奏でるように、それぞれの詠唱を紡ぐ。
ソウヤは魂に誓いを。
エルトは自らの魂を呼び起こす。
そして…|その
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