第3章
1節―最果ての宮―
95層―前半―
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屋敷の中を歩いて行くと、待合室にルビとエルトがお茶を飲みながら待っていた。
「どうでした?」
「竜目のナミダと同じかそれ以上の物資を持ってこい、とさ」
「…竜目のナミダを、とったほうが…はやい」
ルビの言葉にソウヤは商人を心のなかで呪うと、アイテムストレージからルビとエルトの武器を取り出し、渡す。
竜目のナミダはここらへんの地域では取れないことを知っているので、とったほうが速い…というのはないのだが。
「エルト、知っているか?あれに届きそうな物」
「そうですね…」
エルトは手を口に持って行くと、考えるような素振りを見せる。
不意に、「あ…」と口を開く。
「一応あるにはありますが…その前にソウヤさんはなにか持っていないんですか?」
「――あ…」
そういえば、とソウヤは間抜けな声を上げる。
アイテムストレージを開くと、ツラツラとページを更新していくと…複数の物が上がってくる。
ソウヤは端っこで立ち続ける執事であろう男性に声をかけた。
「ここで魔物のアイテムを取り出してもいいか?」
従者はしばらくの間無言で居ると、不意に縦に頷いた。
どうやら良いらしい。
ソウヤは2つ3つアイテムを待合室に設けられた大きめの机の上に置いていく。
それは普通の人が見れば、一瞬で軽い失神をしてしまいそうなほどレア度が高いものばかりである。
それを見たエルトは軽く固まっていた。
「これ…竜のナミダと同等以上すぎると思います……」
エルトの顔は笑顔だったが、目は軽く死んでいた。
それから1時間ほどソウヤが出してはエルトに鑑定してもらうという作業を続けた結果――
「…これ、ですかね」
「だな…」
ソウヤとエルトは単純作業を続けた精神的ダメージにより、やわらかなソファに倒れこんだ。
なおルビは1時間優雅に紅茶とお菓子を頂いていた。
結局、エルトが選び抜いたのは竜のナミダの素材となる竜の一部分…加工する手間も含めて、大体その竜の心臓だった。
結局戦闘行為には至らなかったので、それぞれの得物をアイテムストレージに収納する。
すると、不意にエルトは立ち上がった。
「――すこし、祖母の様子を見てきます」
その表情を見たソウヤは、一瞬驚いた顔をしたがすぐに苦笑する。
――まるで、何かを悟ったかのように。
「あぁ、行って来い」
「…はい。行ってきます」
エルトは少し切なそうな笑顔を向けると、扉に手をかけて部屋から出た。
ソウヤはしばらく閉じた扉を見続けると不意に立ち上がる。
「…行くぞ、ルビ」
「――うん」
その数分後、ソウヤは竜のナミダを手に入れた。
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