第3章
1節―最果ての宮―
95層―前半―
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向ける。
笑っていたのは、ただただ静かに見守っていたルビだった。
エルトはルビが急に笑ったことに驚き、思わず「ど、どうしたんですか?」と問う。
それにルビは答えることができず、笑い続ける。
それを見たソウヤとエルトは、ルビが笑った理由に更に困惑するだけだった。
「竜目のクスリを譲ってほしい」
ソウヤは目の前に居る男にそう言って頭を下げる。
「それ相応の対価を用意してもらわないとできないな」
豚のように太った男は、その脂肪の塊を叩きつける。
竜目のクスリをこの城下町内でもっているのはこの商人だけだ。
ソウヤはその言葉に予想していたのか、懐の中からかなりの重さを持つ袋を机の上に置いた。
商人は袋をふんだくるように取り上げると中身を見て、机に放り出す。
「金額的には申し分ない」
だが、と商人は憎ったらしい笑みを浮かべた。
どうやら定額の1.5倍以上の金額だけでも満足しないようらしい。
「竜目のナミダの在庫が1個でもあればいいのだが、あいにくそれがラストの1個でね」
「プラスして何かしてこいと…?」
ソウヤは目を細める。
「それなら、その金額も定額で払わさせてもらうが?」
「あぁ、構わんよ」
出来るのならばな、と商人の目が怪しく光る。
そして脂で光っている人差し指を伸ばす。
「ただ、お前が今着けている剣を渡してもらえれば…な」
背筋が凍るのをソウヤは感じる。
商人がもっとも興味を持っているのは他から見れば法外な金貨の束ではない。
もっと、価値のあるものだ。
あの商人の目にあるのは、ソウヤの持つ1振りの剣。
ソウヤが1年以上の間鍛えに鍛え続けてきた伝説の名を持つに等しい物。
つまり…雪無だ。
―なるほど、どおりで剣を常備している状態で通されたわけか…。
しかし…とソウヤは考えた。
雪無は鞘から抜き放ち、使用者本人がわざと出さなければ本来の剣と同じにしか見えない剣を、何故この眼の前の商人は人目で気付いたのか。
商人はソウヤの視線を感じるとゲラゲラと笑う。
「そんな”魔族の血の匂い”が濃い剣が、ただの剣ではないにきまっているだろう?」
「…なるほど、な」
竜目のナミダを手に入れるには、つまり一定以上のランクを持つ剣を持ち、それを渡さないと駄目らしい。
クエスト内容を理解したソウヤは金貨の入った袋から余分な分だけ抜き取り扉に手を掛ける。
「どのクラス以上の剣だ?ほしいのは」
「別に竜目のナミダと同じかそれ以上の”剣以外”の物資でも構わんさ」
ソウヤは扉を締めると、アイテムストレージを取り出し持ち物の確認をしていく。
廊下を商人の住んでいた
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