第3章
1節―最果ての宮―
91層―後半―
[5/5]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
いというよく分からないものを回復する効果はない。
少なくとも、現在の熟練度ではそんな魔法はない。
「…どうすれば、お前を助けられる?」
「…」
ソウヤの問いにルビは答えない。
ただただ、首を横に振るだけ。
それは手段がない…というよりその手段をしたくないの意味にソウヤは見えた。
「言ってくれ、頼む」
どれだけ頼んでもルビは言ってくれない。
つまり、それだけソウヤにも危険が及んでしまう事なのだろう。
だがソウヤにはルビを放っておくことは出来なかった。
と、そこに後ろに気配を感じソウヤはすぐさま雪無を握りしめ、現れた者へ警戒を行う。
そこにいたのはあの老人だった。
「どうかしたのかの?」
何故ここにいるのか。
それは聞くだけ時間がもったいないと考えたソウヤは、単刀直入にその老人に事情を話した。
「ふむ…。この御嬢さんがのぅ」
「どうしたんだ?」
「この子をこの苦しみから防ぐ方法はあるんじゃよ」
「しかし…」と老人は言葉を濁らせる。
ソウヤは怒りをにじませた声で「早く言え」と急かせた。
「ふむ…。それはの、この子の右目をお主に移植し、お主の右目をこの子に移植する事じゃ」
「…そうすると俺はどうなる?」
老人は、しばらく黙った後「お主次第かの」と呟いた。
「この御嬢さんは魔族の中でも、魔王の次に位が高い貴族魔族じゃ。しかし、禁術に手を染めるとは…一体なんのせいで…」
「とにかく、早く俺に移植しろ」
急かすソウヤに老人は気難しそうな表情をする。
「本当に、いいのかの?もしお前が禁術の力に負けたら御嬢さんの二の舞…いや、もっとひどいことになる」
「爺さん、一体誰に心配してる?」
きっと、失敗したら死ぬのだろう。
元の世界に戻って、謝罪することも叶わないのだろう。
地上に戻って俺たちを待つあの少女たちと共にもう一度旅をすることも叶わないのだろう。
だが、それが怖くて逃げてしまえば――
「俺は妖精最強の男なんだ、負けるはずないだろう」
――俺はきっと、後悔する。
「俺は二度と後悔しないと誓った」
きっと、あの少女たちに顔を合わすことが出来ない。
「俺はこの子を救う」
きっと、元の世界に戻ってもまたいつもの日常に戻ってしまう。
「だから、その禁術は俺が背負う」
老人はしばらく呆然とした後、ソウヤに手術を行った。
結果、ソウヤは新しい力を我が物とした。
己の右目を代償として、『消滅』というスキルを手にしたのだ。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ