第3章
1節―最果ての宮―
少女
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わけである。
そして、見た目少女の魔族を痛めつけようとした結果、この少女が目覚め近寄れなくなったのだろう。
それからしばらく経ったかしらないが、ソウヤが現れてあの魔族を殺すことを依頼した…ということなのだ。
ここまで考えたソウヤはいくら同じ人だといえ、行ったことに頭を抱えてしまう。
「つまり、この少女は老人の分身が入っているわけではないのか」
「そうじゃな、多分地上から来たのじゃろう」
ソウヤは静かに少女に近寄ると、少女と同じ目線になるべく屈んだ。
その瞳は吸い込まれそうなほど綺麗なルビー色で、血の色とは言い難い美しさが合った。
「君、俺についてくるか?」
「…え?」
「君がここに居続けることはできるが、危険ばかりだ。だが、俺についてくれば地上に出ることは出来る」
出来る。
そうソウヤは言い切った。
世界で最も強大な迷宮の中で、そう言い切ったのである。
そう出ることに一切の自信も欠けること無くそう言い切ったソウヤを前に、少女の決断は即答だった。
「あなたに、ついていく」
「…そうか」
ソウヤは少しだけ微笑むと少女の前に手を差し出す。
その差し出された手を見て、少女の美しいルビー色の瞳が揺らぐ。
そして、戸惑ったように恐る恐るその手を掴んだ。
「あ…」
―暖かくて…大きくて、とても……硬い。
下的な意味ではなく、魔族の少女がソウヤの手を掴んで正直に思った感想がそうだった。
中学生ほどの身長しか無い少女には、その手はひどく大きく、そして幾多もの戦いをくぐり抜けてきた証の手の硬さ。
そして…初めて人と接することが出来た少女は、人の手が暖かいのだと知ったのだ。
「俺の名前はソウヤだ。見た目からも分かる通り、ヒューマンだ」
「私は…」
少女は言葉を詰まらせる。
そして顔を反らすと、ソウヤをチラリと見た。
「…貴方が、決めて」
「…っ。分かった」
少女のその行動がなんとなく日頃どんな扱いを受けてきたのかなんとなくソウヤは察し、そのお願いを承諾する。
そして、静かに少女に名前を付けた。
「ルビ…ってのはどうだ?」
「…良いと、思う」
そういうと、少女は顔を下に持って行くと小さく、消え去りそうな声で「ありがとう」と言った。
ソウヤはそれをあえて聞かなかったことにすると、今も立ち続けこちらを見つめ続ける老人に目を向ける。
「俺達はもう行く」
「うむ、次の層へはここからこっちに進んだところじゃ」
そう言って老人はある方向へ指をさした。
「あぁ」
とだけソウヤは答えると、未だに力が出ないのであろう少女をおんぶして、その方向へ歩き始めた。
「すぅ
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