第3章
1節―最果ての宮―
少女
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ヤと少女の眼にはすべての景色が線に見え、刹那の間にダンジョンの入り口にまでソウヤと少女はたどり着いていた。
ソウヤが100mほど地面を削りながら勢いを殺していき、やっと止まる。
「もう息をしてもいいぞ」
ソウヤは疲れたことによるため息をついて、優しく言うことを忘れて少女にいつも通りの口調でそう告げる。
少女は、間髪を入れずソウヤに先ほどの現象は何なのかと質問した。
「あれ、何…?」
「あれか。あれは『魔力加速』っていう、俺のオリジナル魔法」
「どう、したの?」
「剣に多量の魔力を貯めて、それを一気に剣先から射出することで一瞬だけだが非常識なみの加速を得られる」
少女は、しばらく黙っていると不意にソウヤに顔を向ける。
その顔は恥ずかしさで顔を少し赤らめていた。
その顔で、ソウヤは未だに少女を片手で抱いていることを思い出し、「悪い」とだけ言って地面に下ろす。
少女は未だに冷めぬ頬を隠せず、それでも小さく「ありがとう」と言った。
「さて、次の層に行くにはどうすれば良いか…。この状態で開いているかすらわからないし……」
「開いておるよ」
背中から聞こえる声に、ソウヤは瞬時に戦闘モードへと移行し目に見えぬ速さで雪無を声が聞こえる方向へ振り、相手の首筋の直前で止まらせる。
そこに立っていたのは、ある程度見慣れている老人…もとい精霊だった。
「老人、なぜ開いている」
「このクエスト自体。異例中の異例だったからの」
「異例…?」
老人は頷く。
「村の人が全員感情こもっているように思わんかったか?」
「あぁ、普通の人と同じ感じがした」
「あれは試験的に儂の分身をすべての住民に入れてみたんじゃよ」
精霊はそんなことまで出来るのか…とソウヤは内心呆れる。
しかし精霊はそんなことを気にしない様子で話を続けた。
「しかし、そんな時にいきなりこの村にこの娘が現れたんじゃよ」
「まさか…ここまで……?」
「いや、それは無いじゃろう。そうなれば儂が察知するからの」
じゃあなぜ…という疑問の目を先ほど助けた少女に向ける。
少女は「わからない…」と頭を横に降った。
「目が覚めたら、ここだった」
精霊は頭を掻き、「そういえば現れた時も昏睡状態だったの」とつぶやいていた。
ソウヤは状態がこれ以上良くも悪くもならないと判断して、話を切り出す。
「それでどうなったんだ」
「自己の感情がそれぞれ持っているせいで、魔族だと気付いた村々の人は昏睡している間に近くにある小さい洞穴に少女を閉じ込めたのじゃ」
なるほどな…とソウヤは思う。
魔族=悪という常識が広まりきって定着しているこの世界では、昏睡している状態の魔族は良いカモだった
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