第3章
1節―最果ての宮―
帰る理由
[4/4]
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
たそれを、ソウヤは常時身につけている。
―…そっか。今、気づいた。
ソウヤは、いまさら自分が大切なことに気付いたことを知った。
アイテムストレージから、迷宮から目が覚めた時にルリが残しておいてくれた手紙を取り出す。
その最後らへんには『必ず帰ってきてください』という言葉。
ソウヤは、老人に身体を向けて真剣な表情で向き合った。
「俺は――」
老人は、今までの中でもっとも真剣味を帯びた表情でソウヤを見つめている。
その視線を受けながらソウヤははっきりとした口調で老人の初めの問いに対して答えた。
「――この世界で、居場所を見つけた。大切な仲間を見つけた。確かに、この道のりは苦しい、だが…」
ソウヤは、出入口へともう一度身体を向け直して歩き始めた。
「だが、仲間が『帰ってきて欲しい』と、言ってくれた。俺はその願いを叶える、自分のためだけに生きるのは…めんどくさいんだよ」
ソウヤは、それだけを言い残して村長の家から離れていく。
その顔は…来た時に比べて顔がたくましくなったように、老人は感じていた…。
「…どうでしたか、あの青年は」
「主君が言っていたとおり、有望なものでございました」
青年が去った後、不意に麗しい美女が現れ老人の目の前に立つ。
老人の言葉に美女は嬉しそうな表情をする。
「貴方がそういうのなら、間違いないのでしょう」
「はい。間違っていたのならば、この将軍精霊である私の首を主君に捧げましょう」
「そこまで言える人物なのね…?」
その老人の意外すぎる言葉に美女は驚いたように言葉を返す。
老人は手に飲み物を出すとそれを啜り、頷いた。
「まだまだ中身は子供ですが、それでも同年代からすれば異常なほど落ち着いていますな」
「彼だけ本当に辛い思いばかりさせているものね…」
「しかし、その苦難もあの青年にとっては大きな経験となっております。それに関しては礼を言うべきでしょうな」
美女はあの運命を勝手に操っている女神を思い出し、腸がイライラしてくるのを感じる。
それと同時に”微少”ながら漏れだす神力に、老人は内心冷や汗どころかこの場から逃げ出したくなるのを抑えた。
―神力を微量ながらも出したら、強者でも一瞬で魂を持っていかれるというのに…。まぁ、仕方ないがの。
老人は目の前の美女に対して内心でため息をつく。
それだけのことを、あの運命の女神はしているということである。
「とにかく、器を変えるわよ」
「はい」
すると、老人身体は砂と化していく。
その砂を女神は両手で拾って「お疲れ様」とだけ言って元に戻す。
そして、女神の姿と見えぬ精霊はその場から消えていった。
[8]前話 [9]前 最初 [1]後書き [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ