第1章
3節―平穏を裂く獣―
緩やかな旅
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
風が吹く。
それはある人にとっては心地よく――
――ある人にとっては、悲しみに染まっているように思えた。
「行こう、ルリ」
瞳を潤ませ、眉を歪めながら現実を受け止めるルリに青年は手を差し伸べる。
濃い蒼に染まった髪と目に、病人だと思えるような白い肌。
そんな青年の姿を見たルリは小さく頷くとその手を取る。
「はい、ソウヤさん」
青年――いや、ソウヤはルリの言葉に苦笑すると立ち上がらせた。
ソウヤとルリは二人で顔を合わせ笑う。
「なんだか違和感あるね、それ」
「姿が変わっているからですね」
そんな茶番に一区切りをうつと、ソウヤとルリは真剣な表情で顔を見合わせる。
次に向かうのは石で造られた小さな墓。
「リクさんに、挨拶できた?」
「はい…。ソウヤさん、ありがとうございました」
そんな墓に、“リク”と彫られた文字がある。
――結局、“亡霊解放”を行ってもリク老人は生き返ることは無かった。
あの時、リク老人が息を…いや意識を取り戻したのは数分だけだったらしい。
だがその時に話せることをしっかり話せたのか、ソウヤが目覚めた後のルリは悲しみに顔を歪めながらも、気丈に振る舞っていた。
ソウヤ自身もその数分間のことはルリに問いていない。
理由は一重に、家族でしか話せないこともあるだろうと思っているからだった。
その後ソウヤは“亡霊解放”によるデメリット――つまりスキル使用不能の『呪い』に苦しめられる。
だが、何故か『呪い』の期間は1週間と短かった。
もし襲撃された時とっくに解呪できていたのなら…という後悔の念から、ソウヤはその理由を考察する。
そこから出た答えは、“使用した亡霊の強さだけ、『呪い』の期間が増える”というものだった。
シュリードと戦ったとき、ソウヤは確実に倒せるように強力な魔物の魂を複数使用した。
だがリク老人を救うときは魔力を超強化すればいいのだから、魔力値が異常に高いがその他のステータスが低い魔物の魂を2,3使用したのである。
もしかしたら“使用した数”かもしれないが、そうだとするならバランスがいとも簡単に崩れてしまう。
この世界に連れてきたのがもし“FTW”を作った人物なら、そんなことをしないだろうとソウヤは思っていた。
「ルリ、本当に大丈夫?」
「――はい」
髪と瞳、そして肌の色を変えたソウヤはルリに問いかける。
ルリが纏うもの。
それは普通に村民として暮らすには些か…いや、かなりおかしなものだった。
左腰に長剣、後ろ腰には短剣がそれぞれ刺さっており体は皮鎧で覆われている。
それを更に覆うようにマントを羽織った姿が今の
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ