暁 〜小説投稿サイト〜
グランドソード〜巨剣使いの青年〜
第1章
3節―平穏を裂く獣―
強者と弱者
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臓や肉、骨が粉砕されたことを男は感じ取り、しかしその打撃を行った足を掴もうと腕を伸ばす。

 だが、足りない。

 次の瞬間には掻き消えた相手。
 それを煮詰まるように沸騰している脳で再び考え――

「ソコ、カアアアア!」

 ――運よく相手の居場所を判明する。

 鋼鉄をも砕くその拳を男はオーバーに構えながら全力で突き出した。
 相手もその巨大な剣を振るうが、男はそれさえもこの拳は突き抜けると理解する。

 だが、足りない。

 その巨大な剣は拳とぶつかり合う瞬間に、その姿を掻き消したのだ。
 男の目の前に広がるのは男の無防備な腹部分だけ。
 どうしていきなり巨大な剣が消えたのか、それを考えるだけの理性をもう男は必要としていなかった。

 拳が当たる瞬間に起こる、歓喜に身を全て任せようとしていたのである。

 そして男の拳がそのまま相手の腹に収まると思った瞬間――

「足りないな、何もかも」

 ――自身の視界が地面にあることに気が付いた。

 目の前に広がるのは“頭を失くした”巨躯な体が地面に倒れこむ姿だけ。
 それを見て、男はすぐに察した。

 あぁ、オレは死んだのだ…と。

 結果、男はソウヤに対して全てが足りなかった。
 数少ない希少能力持ちであり、その効果はかなり強力。

 だが“その程度”の相手では“希少能力を3つ持つ”ソウヤには敵いようがない。
 初めから、勝負は決していたのである。




 ソウヤと希少能力持ちの男。
 2人の戦闘をルリは必死にソク老人を回復させながらも、グルフの中でも灰色種が誇る圧倒的な動体視力で眺めていた。

 初めにソウヤは考え付かないほどの速さで後ろへ回ると、そのまま蹴りで無防備な背中を蹴り飛ばす。
 そして、また圧倒的な速度で相手をかく乱するとわざと相手に見つかるように殺気を放ったのである。
 当然の如く殺気に反応し攻撃しようとした相手にあわせ、ソウヤはその巨剣を振るった。

 その巨剣と拳がぶつかり合う次の瞬間、“巨剣は片手剣”に収縮する。
 当然、リーチが変わったことによりその刃と拳はぶつかることはなくなり、返す刃でソウヤは男の首を一閃したのだ。

 ソウヤはその唐突な加速を“肉体強化”で、巨剣から片手剣に収縮させたのは“空間(マギ)魔法”で行ったのである。
 またそれは、ソウヤの持つ希少能力の2つでもあった。

 グラギフトに着いた血を軽く剣を空振りさせることで取り払うと、ソウヤは鞘へ仕舞い急いでソク老人の元へ走る。

「ルリ、ソクさんは!?」
「水魔法で回復してるんですけど…よ、良くならなくて…!!」

 慕っていた人に迫る唐突な死の予感に、ルリは体を震わせた。
 ソク老人の体は痣だ
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