第1章
3節―平穏を裂く獣―
盗み、殺す
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《おとう》様!」
「ルリ、逃げるのじゃ…!!」
ソク老人は体中に痣を作っていて、その貧弱な老体を更に痛めつけたような姿にルリは頭に血が上った。
それ故に、ソク老人の忠告を無視して全力でそれらを行ったであろう6人の賊に凄まじい速さで近づく。
「――!?」
あまりに圧倒的な速さに油断していた6人の賊は誰も反応できない。
それを利用し、ルリはリーダー格であろう巨大な男の無防備な体に強烈な蹴りを放つ。
女性から出たとは思えない威力が男を襲い、成す術無く吹き飛んだ。
地の妖精は元々、身軽で素早く一撃が重たいことが特徴の種族である。
その分魔法や耐久にほかの種族よりかなり劣っているが、あまりそれはグルフにとって致命的ではない。
何故なら、それを躱しきれるだけの技術があったのだから。
ルリはそのグルフの中でも珍しい、灰色種の狼の血を持っていた。
通常の茶色の瞳と髪を持つグルフと違い、灰色の瞳と髪を持つ灰色種は周りよりも早く走れ、周りよりも重い攻撃が放てる。
それ故に、この中の誰もがルリに勝つことが出来ないのだ。
「っのアマァ!」
――リーダー格であろう、巨躯を操る男以外は。
その怒りに満ち満ちた声をルリが聞いた次の瞬間、ルリは“吹き飛ばされた”。
「――――!!」
背中と壁がぶつかり合い、襲い掛かるのは声の出ないほどの痛みと、肺中の空気が抜けていく感覚。
その両方を襲われながらルリは意識を何とか保ち、顔を上げる。
「糞アマが、ふざけやがって…!」
目の前にいたのは“鬼”だった。
怒りを燃やし、自身を痛めつけた相手を徹底的になぐり殺すことだけを求めた鬼。
ルリが特殊であったと同時に、巨躯な男も特殊であったのである。
その男は、生まれた時から忌子だった。
小さいころから癇癪を起こすと家が吹き飛び、地面に穴が開く。
彼は、怒りを巻き起こすと誰も止められない存在に“生まれた瞬間”から成っていた。
そんな彼が初めから持っていた能力、それが“怒炎の鬼”。
怒ることで攻撃力と素早さが最大20倍にまで膨れ上がり、代わりに自我を忘れ防御力が1/20に固定される。
性能がぶっ壊れているのは一重に、唯一しか持てない“希少能力”に分類されるからだった。
―体が、動きません…!?
そんな、文字通り馬鹿力に殴られながらもルリの体が潰れておらず意識を保っていられるのは、男が捕まえるために手加減したからである。
だが、意識はあるのに体が言うことを聞かない。
そんな意味ではこの男は卓越した技術力を持っているといっても過言ではなかった。
「ル、リ…!」
自分
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