第1章
2節―狂炎と静炎の円舞―
『亡霊解放』
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圧倒的な強さを得る代わりに、死者の重みをすべて背負う。
それが、“強き者”の宿命。
それが、“弱き者”の呪い。
これこそ“呪いの文”。
「――力を貸せ、亡霊。『亡霊解放』…!」
数体の亡霊を黄泉へ送り、その宿業を一身に背負う禁呪。
最後の“呪いの文”を唱えた瞬間、地獄炎と業火は一瞬にして消え去る。
シュリードは、その目の前の光景を未だ受け止められずにいる。
最初、シュリードは“青年”のことを「多少はやるが、無謀な青年」としか見ていなかった。
数千の魔物相手に無双し、息を切らしながらも戦う姿はシュリードのよく知る“妖精”の姿とはかけ離れたものだったが。
それでも、あまりに普通の魔物と魔族の差は大きい。
魔族の最底辺である下級魔族でさえ、数百の平凡な魔物よりも強力なのだ。
上級魔族である自身は、1万を相手にしても余裕で勝てる力を持っているのである。
それでも、合計11もの業火を直撃しながら生きていたのは流石のシュリードも驚いた。
下級魔族でさえ瞬殺できる火力を受けながらも、生きている青年。
それによりシュリードは「本気でやるべき相手」と判定し、自身の最強魔法を撃ち放った。
だが、こんなのはありえない。
ありえては、ならないのだ。
「――――」
シュリードの目の前に広がる光景。
それは、ソウヤが『極熱業火』を吹き飛ばし巨剣を振りかぶるものだ。
たった一人の妖精が、上級魔族を相手取りさらに上回るなぞ聞いたことがない。
そう、“ありえるはずがない”のである。
“システム上、そこまで妖精は強くなれない”ことを――――は知っていた。
――――は嗤う、システムをも上回る彼の強さに。
そして、彼の今の姿に。
黄色がかった肌色だった肌が、今では白い純白に染めて。
漆黒に染まっていた髪は銀となり月明かりに煌めき、同じく漆黒だった瞳はまるでエメラルドのように美しい。
その姿に見定められたシュリードは、自身が死ぬと理解しながらもこう思わずにはいられなかった。
―『幻想騎士』のようだと。
「逝け、シュリード」
ソウヤの手から振るわれる巨剣に裂かれ、シュリードはその命を儚く散らす。
それを見た――――は肩を震わせながら空に手を動かすと、嗤う。
「…面白いもの、見せてもらったよ。ソウヤ君」
――シュリードを撃破しました――
――MVP・LAを獲得しました――
――同時に獲得したため、報酬として“業火魔法”を獲得しました――
――『幻想騎士』を獲得しました―
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