第1章
2節―狂炎と静炎の円舞―
『軍勢の期』
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「「奔れ、『雷瞬速!』」」
――エレンが『瞬速雷』と名付けられた“技”が発動される。
全身に雷を纏わせ、本来の何倍もの速さで移動するエレンとソウヤ。
その速度は、もう一兵士に残像さえ残そうとしていた。
エレンはソウヤが近づきつつあるのを確認し、レイピアを力強く構え――
―咲き乱れろ!
「――『華雷剣』!!」
華のようにスパークを瞬かせながら、エレンの剣は雷を帯びる。
それと同時に、ソウヤも血のように紅い炎を纏っていた。
―斬り燃えろ!
「――『地獄炎剣!!』」
エレンの華の雷を帯びたレイピアと、ソウヤの地獄の炎を帯びた長剣がぶつかり――
――次の瞬間に、勝敗は決まる。
「俺の、勝ちだな」
エレンの持つレイピアが弾き飛ばされ、ソウヤの持つ長剣がエレンの首筋に当てられていた。
それを確認したエレンはため息をつくと、吐き捨てるように言葉を出す。
「やっぱりソウヤ、お前は強すぎだよ」
―団長も大分おかしいだろ…。
周りで訓練していた兵士と騎士たちは、エレンとソウヤの戦いを見てそう思った。
「――『軍勢の期』が来てしまったか」
静かで暗い部屋の中、蝋燭の火を見ていた王はポツリと呟く。
深く椅子に座り込んでいる王と向かい合うように頭を垂れている黒い影は、その王の言葉に短く「はっ」と答えた。
「南東から魔物の群れ、総数約1万。死守していた砦も突破され、そこにいた兵、騎士はほぼほぼ全滅したようです」
各地に派遣している兵、騎士の数は大方把握している王はそれを聞いて大きくため息をつく。
南東の砦は比較的魔物が生まれやすい森や洞窟が少ないので、比較的配置していた数が元々少なかった。
それ故に被害も少ないと考えることもできるが、それでも死んだ者はいないわけではないのである。
「明朝、すぐにギルド“小風の妖精”と“破壊の竜巻”を招集じゃ。エレンとライトにもその旨を伝えるようにな」
「…はっ」
そこですぐに動き出すと思われた影は、少しだけ動くのを躊躇うと――
「王、誠に失礼ながら訪ねたいことが」
「うむ、話せ」
「…ソウヤ殿は、いかがされますか」
――食客であるソウヤに、手助けを請うことを暗に進めた。
大方予想していた王は、小さくため息をつく。
「…一応、伝えておくのじゃ」
「はっ」
そして影はこの空間から消えた。
流し目で見送った王は、窓から差し込む月明かりを見つめると目を細める。
「…1万、か」
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