第1章
1節―プロローグ―
異世界に呼ばれた日
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した男のその顔、いや存在自体があまりに“綺麗”だった。
まるで一世紀に一人レベルの芸術の才能を持つ者が、一生をかけて作り上げた作品のように完成度が高い。
“醜い”と思える部分が何一つないのである。
「――――」
なのに、何故だろうか。
あまりに綺麗な顔をしていて、本来ならば見惚れる以外にないはずなのに――
「…ッ!」
――どうして、ここまで“気持ち悪い笑顔”をしているのだろうか。
「さぁ、諸君。残念だけれど君たちの願い…元の世界に帰すことは叶わないよ」
「なんでだよ!」
「こんなところに来させたんだ!戻すことぐらい出来るだろうッ!?」
そんな声を聞いて、その男はピタリと笑みを掻き消す。
争い事も、人に恨まれることもあまりない世界に生きていた蒼也たち。
本来ならば俗にいう“殺意”などに一切縁のない蒼也たち。
だが男が無表情になった瞬間、すさまじい圧力が体全体に掛かったように身体が動かなくなる。
体中の力が抜け、蒼也は尻餅をついた。
―怖い。
争いにも戦いにも無縁だった蒼也たちが分かるほどに濃密な“殺意”。
いや、これは“殺意”ですらなく“イラつき”だ。
ただの“イラつき”が蒼也たちに“殺意”と思わせたほどの濃密な圧力をかけたのである。
「なんでって、楽しく無いからに決まっているだろう。それぐらい分かれよ、下郎ども」
男はそういうと、再び笑みを取り戻す。
その“気持ち悪い笑顔”が、今の蒼也たちにとっては救いだった。
そうして、その恐怖を何とか払いのけ段々蒼也はこの後の展開を把握する。
「――ッ…!」
身体が、熱くなるのを感じた。
きっと自分もあの男と同じぐらい笑っていると蒼也は断言できる。
なぜなら、何度も夢見てきたからだ。
「誰かこんな眠い世界から連れ出してくれないか」と。
だから、早く言ってくれ。
「よくわかったのなら、君たちには――」
こんなクソッタレな世界から連れ出してくれ。
こんな変わり得ない世界から連れ出してくれ。
こんな面白みのない世界から連れ出してくれ。
こんな――
「――異世界へ行ってもらうからね?」
――救いのない世界から連れ出してくれ。
「大丈夫、君たちには“特殊能力”を上げるから、あまりに強い敵にあわない限り死なないから。あと、キャラクター名は本名になるから気を付けてね。あぁ、最後に脳内でメニュー管理は大体できるからね」
恐怖のあまり声を上げられない人々を良いことに、マシンガンのように男は必要事項をさっさと言い終わると、手を振る。
それは、あまりに憎たらしい笑みで――
「それじゃあ、がんば?
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