暁 〜小説投稿サイト〜
グランドソード〜巨剣使いの青年〜
第1章
1節―プロローグ―
異世界に呼ばれた日
[2/5]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
した男のその顔、いや存在自体があまりに“綺麗”だった。
 まるで一世紀に一人レベルの芸術の才能を持つ者が、一生をかけて作り上げた作品のように完成度が高い。
 “醜い”と思える部分が何一つないのである。

「――――」

 なのに、何故だろうか。
 あまりに綺麗な顔をしていて、本来ならば見惚れる以外にないはずなのに――

「…ッ!」

 ――どうして、ここまで“気持ち悪い笑顔”をしているのだろうか。

「さぁ、諸君。残念だけれど君たちの願い…元の世界に帰すことは叶わないよ」
「なんでだよ!」
「こんなところに来させたんだ!戻すことぐらい出来るだろうッ!?」

 そんな声を聞いて、その男はピタリと笑みを掻き消す。

 争い事も、人に恨まれることもあまりない世界に生きていた蒼也たち。
 本来ならば俗にいう“殺意”などに一切縁のない蒼也たち。

 だが男が無表情になった瞬間、すさまじい圧力が体全体に掛かったように身体が動かなくなる。
 体中の力が抜け、蒼也は尻餅をついた。

 ―怖い。

 争いにも戦いにも無縁だった蒼也たちが分かるほどに濃密な“殺意”。
 いや、これは“殺意”ですらなく“イラつき”だ。
 ただの“イラつき”が蒼也たちに“殺意”と思わせたほどの濃密な圧力をかけたのである。

「なんでって、楽しく無いからに決まっているだろう。それぐらい分かれよ、下郎ども」

 男はそういうと、再び笑みを取り戻す。
 その“気持ち悪い笑顔”が、今の蒼也たちにとっては救いだった。

 そうして、その恐怖を何とか払いのけ段々蒼也はこの後の展開を把握する。

「――ッ…!」

 身体が、熱くなるのを感じた。
 きっと自分もあの男と同じぐらい笑っていると蒼也は断言できる。

 なぜなら、何度も夢見てきたからだ。
 「誰かこんな眠い世界から連れ出してくれないか」と。
 だから、早く言ってくれ。

「よくわかったのなら、君たちには――」

 こんなクソッタレな世界から連れ出してくれ。
 こんな変わり得ない世界から連れ出してくれ。
 こんな面白みのない世界から連れ出してくれ。
 こんな――

「――異世界へ行ってもらうからね?」

 ――救いのない世界から連れ出してくれ。

「大丈夫、君たちには“特殊能力(エクストラスキル)”を上げるから、あまりに強い敵にあわない限り死なないから。あと、キャラクター名は本名になるから気を付けてね。あぁ、最後に脳内でメニュー管理は大体できるからね」

 恐怖のあまり声を上げられない人々を良いことに、マシンガンのように男は必要事項をさっさと言い終わると、手を振る。
 それは、あまりに憎たらしい笑みで――

「それじゃあ、がんば?
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ