第1章
1節―プロローグ―
Fairy The World ―妖精世界―
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静寂だけが蔓延る森。
生き物たちがただただ生きるだけの世界に、雑音が入り込む。
地面を低く鳴らす足音に、生物の荒い息音。
そして――
「くそ…!どうしてこんなことに…」
――青年の声が響く。
”この世界では”珍しい黒く半透明の羽を生やした漆黒の髪と目をした青年は、後ろから聞こえる足音から逃れるように走る。
服装は麻の服と旅人が付けていそうなマントのみで、少なくとも戦える者ではない。
そんな青年を追い立てるのは、異形のものだった。
ライオンに翼を生やしたその化け物に、全身鎧を着込んだ二足歩行をする豚が2匹。
どれも”青年の世界”ではあり得ない姿形をしている。
なぜ、自分はこの異形のもの達に追い立てられているのか。
そんなことを思い返すように青年は思考していた。
青年は、自身の部屋に戻るとすぐに袋を開けニヤニヤと顔を破綻させる。
その中身は”Fairy The World”と書かれた箱だった。
「いやぁ、手に入れるの大変だったなぁ」
思いふけるように青年は椅子に座り、全身を背もたれに預ける。
まるで老人のような行動に、青年は気にせず満足気な笑みを浮かべた。
”Fairy The World”。
通称”FTW”は、”約束された勝利のMMO”と呼ばれる大いに期待されているゲームである。
だが、FTWは当初は内容が殆ど既存の内容と変わらないと言われ、量産型の3DMMOだと叩かれていた。
それでも、物好きな者達はやはりFTWにも手を出しαテスターとして参加する。
幸運にもαテスターとして選ばれた人々は、ログインすると同時に絶句することになったのだ。
まず、あまりにもNPCの量が既存のゲームに比べ圧倒的だったのである。
有名どころのRPGは、NPCが1つの街に様々な問題で10~20人となっていた。
しかしFTWは圧倒的にNPCが多く、パッと見で10~20人ほどいたらしい。
ログインしてすぐパッと見で10~20人ということは、街の規模にもよるが現実と同じくらいの街の人口になってしまう。
まるでオフラインゲーム並の人の多さに、αテスターはたいへん驚いたらしい。
そのAIも凄まじく、“一人一人が意思を持っている”と言っても過言ではないほどに高度なものだった。
さらにプレイヤーを驚かせたのは、そのあまりに緻密なプログラムやグラフィックに対し求められるPCのスペックがあまりにも低かったのである。
また、グラフィックだけで見る素人とは別にMMO玄人であるおっさんたちも唸らせたゲームシステムも人気の出る一つでもあった。
“完全成長制”。
「剣を振る・鍛冶を行う・魔法を使う」等々
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