第31話<新緑と赤面>
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たが、なぜか反射的に手を引いてしまい申し訳ありません」
「そうか? よく分からんが」
これは本当だ。彼女がそんな反応をしても別に気分は害さなかった。
何かを抑えるような雰囲気のまま彼女は説明を続ける。
「急に司令との時間は外せないという妙な感情が湧き上がって来ました」
「そうだな。今の時間なら作戦上、無線封鎖もしているから余計な邪魔も入らないから」
『え?』
……と言った感じで、お互いに顔を見合わせた。
「な、なに考えているんだ私は!」
自分で慌ててワザとらしく喋った。それは照れ隠しというか……誤魔化そうとアレコレ次の台詞を考えた。
だが急にカーッとして、こっちまで赤面する心地だ。鼓動が早まる。
直ぐ傍でセミが鳴き始めた。
「う、うるさい!」
一瞬シーンとなる公園。私の慌てぶりに日向は微笑んでいた。彼女のショートヘアが風になびいている。
「あ……」
その瞬間、急に日向の気持ちが分かったように思えた。
「なるほど、そうか」
私は帽子を取って、その想いを自分の中に定着させようとした。
それは男女の関係というよりは組織の上官と部下の信頼関係を、さらに純粋に昇華させたように感じたのだ。
澄まし顔でベンチに佇む日向を私は改めて見詰めた。
「お前の気持ちは純粋に嬉しいよ」
「はい」
普段なら絶対にいえない台詞。だが、自然にそう言えた……もし軍神が本当に居るのなら、その存在に導かれた感覚だ。
……そういえば執務室に来たときの日向は必ず神棚に手を合わせているのを思い出した。
艦娘が信心? まさかね。
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