相反する二人
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ジタバタせずに連れ去られるがままだったイザベリーは、グラシアンから降ろされて寂しそうだったが、彼はそんなのどうでもいいといった表情をしている。
「それで?戦うの?殺されるの?」
以前邪魔された途中から話を始めようとするイザベリー。それに対し、グラシアンは袖を捲り解答する。
「悪いけど、お前をここで倒させてもらう」
「だよね!!それでこそグランだよ!!」
ほしかった回答だったのか、イザベリーは嬉しそうに頬を緩ませる。
「でもごめん。グランはここで絶対に倒さなくっちゃいけないの」
手を強く握り締めるイザベリーを見て、グラシアンは体をその場からズラす。その結果、彼の真後ろにあった木に何かがぶつかり、斬り倒される。
「俺にもお前を倒さなければならない理由ができた」
「あの金髪に助けられたから?」
「まぁ・・・それもある」
一度大きく深呼吸をすると、グラシアンは全身に紫の魔力を纏っていく。すると、彼の顔に、スティングたちと同じようにドラゴンの鱗が現れる。
「けど、それよりももっと大きな理由があるんだ」
「大きな理由?」
首を傾げ、それが何なのかわからないといった表情をするイザベリー。そんな彼女を、幻竜は指差す。
「お前にこれ以上、罪を背負わせたくないんだ」
共に過ごしてきた仲間だったから。かつて自分のために踏み台にした相手だったから。様々な感情が、彼に、彼女を解放するようにと命じている。そんな気がグラシアンにはしていた。
「優しいね。グランは」
汗を拭うように、目元を手首で擦った茶髪の女性は、今までとは異なるほど真剣な表情へと変わっていく。
「もっと早く、この気持ちを伝えていたら・・・私たち、今こんな風になってなかったのかな?」
「そうかもしれない」
二人の目線が下を向き、お互いにあの時こうしておけばと、後悔が脳裏をよぎる。
「さようなら、グラン」
「そうはいかない。お前には罪を償わさせてやる」
女性の頬を滴る涙と、男性の唇から流れてくる血液。それが地面に落ちた瞬間、二人が動いた。
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