運命の出会い
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濯ぎ回しては濯ぎを繰り返して、すっかりきれいにすると、川の水を川の水で満たし蓋を閉めた。
屈んでいるソフィアの背後に向かって、何か黒いものが滑空してくる。
「キャッ!!」
短い悲鳴が上がる。
カラスがソフィアに向かって攻撃をしていた。ソフィアは隠れる所もないので、川のそばで周囲を回りながら逃げ惑っていたが、突然
パンパンッ
と、乾いた音がしたかと思うと、カラスは地面に落下したようで、襲われなくなった。
周囲を見回すと、貴族らしい人影が二つこちらへとやって来るのが見える。
「大丈夫でしたか?お嬢さん。
お一人でどうされたのです?お付きの方は?」
「あ……、助けていただき、ありがとうございます。
私はソフィアと申します。付き人ではなく仲間が二
人、あちらの木陰で休んでるんですけど、食器を洗っていたらカラスに襲われてしまいました…」
カラスにつつかれて乱れた頭部を直そうと外したフードの下から、陽の光を受けて輝くオレンジ色の髪が姿を表す。
「お怪我はありませんか?」
「ご心配には及びません。怪我はありませんわ」
「それはなによりです。
申し遅れました。私はベリル。
しがない田舎貴族ですが、領地を守るのも私の役目ですので、悪魔狩りに出ていたところ、悲鳴が聞こえたので、駆けつけてみれば鳥が滑空を繰り返していたので撃ち落としたのですよ」
「悪魔狩りをされていたのに、お邪魔をしてしまい、申し訳ありません」
「別に構わないですよ。襲われている女性を助けないとあっては、紳士とは言えませんからね。
鳥は部下に任せて、私はお仲間のところまでお連れいたしましょう」
ベリルと名乗った貴族は、見た目は25、6だろうか。緩やかにウェーブを描く彼の髪は申し分のない見事な金髪、その髪に映えるように瞳はこれまで見たこともないような澄んだ深紅で、ソフィアは微笑を湛えるその瞳に見とれていた。
「どうかされましたか?ソフィアさん」
「え?あっ、私としたことが申し訳ございません。ベリル様のように美しい殿方を初めてお目にしたものですから…。お許しください」
「ソフィアさんの髪も充分美しいと思いますよ」
そう言うと、ベリルは白い手袋を嵌めた手でソフィアの髪をひと束手に取ると、ソフィアににっこりと微笑む。
それだけでソフィアは、悪魔の微笑に魅せられてしまっていた。
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