第18話『亡霊の悪鬼〜テナルディエの謀略』【アヴァン】
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揺れ動く、ガヌロンのように――
この両者は『人ならざるもの』との戦いにおいて、非力な者にとってはまさに救世主……『勇者』だった。
『勇者』という時代の黒船のごとき存在は、外交や戦争といったグローバル化で疲弊した『国』にとって、自分たちが救われるための『手段』だったのだ。
太古の時代においては、機界文明から人類を守るために――
当時の時代においては、魔物眷属から人類を守るために――
そして皮肉にも、凱とガヌロンの肉体は、数多の戦いの末、己が肉体に数奇な機転を強いた。
彼自身が倒し続けていたゾンダーと同質の存在……『半人半機』として。
ガヌロンもまた、食らい続けてきた故に成り果てた……『半人半魔』として。
敵を喰らい続けてきた両者は、敵と同じ存在になるという、皮肉とも矛盾ともとれる丘に辿り着いた。
しょせん、人は『喰らう』ことを捨てることはできない。
文明の進化が悪であると決めつけて、古来『人』が伝統的にしてきたように、弱肉強食という自然力学に回帰することを主張する者たちもいた。
だが、一つの紡ぐ未来のために、その道を選ぶしかないとしたら、どれほどの生命が失われてしまうのだろう?
先進の栄華な文明は、古来の伝統方法では賄いきれない。またすべての技術を棄却するというのなら――――
『敵国』に――
『竜』に――
『自然災害』に――
そして……『魔物』にどうやって抗うことができるのだろう?
弱者という礎で成り立ったそれらを、その犠牲をやむなしと切り捨てることが、果たして出来るだろうか?
――目に映るすべてを救う――それ自体が、間違っているのだろうか?
目に映る人が泣き、叫び、苦しみ、愛する伴侶が地に倒れるのを、なんとしても救いたい。それ自体が、間違っているのだろうか?
より良き文明を維持し、遺産を守り続けると願ったとしても、どれが良きもので、どれが悪しきものか、判断をつけることは難しい。
ブリューヌの維新改革――
ただ生きたいと流星に願う今の時代となっては、そのような善悪の概念など、既に失っているかもしれない。
原種大戦――――ノヴァクラッシュ――――代理契約戦争――――幾度となく戦火を広げていこうとも、結局人は刷り込まれた本能から逃れることはできない。
夢――パンドラの箱――
それは無限の希望であり、無数の絶望でさえあった。
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