第30話<準備の裏に>
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、いずれ美保で作りたいと、いつも話しています」
日向は苦笑する。
「まぁな、こんな地方じゃ軍需工場も皆無だからな」
私も笑った。
続いて彼女は軍用車の銃座に上がると手際よく空の弾倉と交換をする。これも普通の機関銃への弾丸補充にしか見えないから周りの陸軍連中も、この作業には、まったく興味を示していない。
「知らぬが仏か」
艦娘も普通の少女にしか見えない。この銃だってそうだ。だからこそ良いのかもしれない。
そういえば今、陸軍が調べている敵の戦車(残骸)だって、恐らく深海連中独自のものではないだろう。それでも私が路地から見上げた瞬間は、かなり強そうに見えた。
しかし結局、艦娘仕様の軽機関銃で、あっさり蜂の巣になった。それから島風と比叡にボコボコニされて……今更、陸軍が調べても何も得るものはないだろうな。
日向は機関銃を軽く点検している。
艦娘が偉いと思うのは夕立も含め基本的な兵器の取扱いに幅広く精通していることだ。だから夕立だって普段は、あんなに可愛らしい天然娘なのに、いざとなると戦闘のプロになる。その落差はすごいよな。
もちろん日向のように外でも普段通り変わらない艦娘だっている。本当に個性豊かな子たちだ。艦娘というのは接するほどに不思議で興味深い存在だと思う。
「司令、車の方は準備完了です」
日向が報告する。
「ご苦労」
私は妄想めいた考えを中断して返事をした。
「あと……」
日向が立ち止まって、こっちを見ている。
「なに?」
「補給物資の中に、これが」
彼女が差し出したのはサンドイッチだった。そうか、もうお昼だな。
誰かな? 祥高さんか鳳翔さんが気を利かせてくれたのだろう。
「量からすると3人分くらいあるな」
ちょっと余る。本来は夕立の分か?
「司令、あの……」
急に日向がモジモジしている。
「あまり時間もないですが、その……」
どうした日向? お前らしくもない。
「え?」
顔が真っ赤なんだけど。
「ちょっとだけ……食べませんか」
「あ、スマン!」
そうだよな。お腹すいたか。今朝から日向は働き詰めだからな。
「そうだな、そうしようか」
もしや、それで遠慮して赤くなっていたのか? ……意外に可愛らしいとこあるな日向も。
美保に着てからの彼女は、いろんな一面を見せてくれる。
艦娘が奥が深いのか? 日向が実は深いのか? まぁ、どっちでも良いが。
「やれやれ、この戦争は分からないことだらけだ」
私は苦笑した。
日向も微笑んでいた。
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