全ては皆の笑顔のために
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ブラックライトのような暗い光に溢れ始め、上の画面には『COMPLETE』の文字が黒く浮かび上がる。が、それ以外特に変化はない。
「あれ……これだけ?」
「……地味ですね」
「あのオーナーにしては意外だな」
「……」
少し肩透かしを食らったような気分になるジェム。ダイバは何も言わない。だがしばらく画面を見つめていると――画面の英語の文字が輪郭からばらばらになっていく。画面そのものにノイズが走り始め、フロンティアパスを持つジェムの手が痺れる。少し大きい静電気が弾けるとジェムは思わず手を離した。同時に画面から小さなポケモンが飛び出て、凄まじい速度でバトルフロンティアの中心部へ向かっていった。
「何今の……?」
「このパスの中に入ってた……ポケモンですかね」
ジェムとアルカが驚く。ドラコが平然と説明した。
「はっきりとは見えなかったが、恐らくはロトムだろう。電気製品に入り込み、キンセツシティなどでは人間の生活をサポートする役目を果たしているが……さて」
「……多分、ここからが本番だ」
ダイバがフロンティアの中心部を見る。それにつられてジェムたちも目を向ける。南端の庭園から見えるのは天高くそびえたつバトルタワーだが、その姿が見る見るうちに変わっていく。
緑色を基調に金色のラインが入ったバトルタワーが、まだお昼前なのに下の方から真っ黒に染まっていく。電気を消したとか空が曇ったとかそういうレベルではなく、一切の光を反射しない純粋な、本当の意味での黒であり闇。まるでフロンティアの象徴を埋め尽くすように天辺まで黒くなったそれは、天まで届く影のようだった。
「な……なに、これ……」
「また何か、異常が……?」
「いや……おい、パスを見ろジェム」
ジェムは落としてしまったフロンティアパスを拾い上げる。するとノイズの入っていた画面が音を立てて切り替わり、そこにはホウエンチャンピオンであるジェムの父親がいた。画面の中の彼はジェムの瞳を捉えた。ジェムの片方の目と同じ海のような蒼色が、チャンピオンとしての堂々と、そして誘い込むような幽玄さで見つめている。
「お父様……」
「まずはフロンティアシンボルを全て集めたことを認めよう。おめでとうジェム。さすが私の娘だ。ルビーもジャックさんも誇りに思うだろう」
「ありがとう……ここまで色々あったけど、やっと最初の夢が叶ったのね」
本当のところ、あまり実感はない。最初は父親の背中を追いかけるためだけに勝負をしていた。父親同様みんなに認められるトレーナーになることこそ目標だったはずだ。でも様々な人々、今隣にいる仲間に関わるうちにそれはジェムにとって少しずつ、求めているものとは違って来たような気がするのだ。昨日の戦いから
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