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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十五話 クラーゼン元帥
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なく俺まで真似しそうだ。

「軍の序列である階級と宮廷序列だ。軍での序列は低いが宮廷での序列は高い、と言う連中は少なくない。宇宙艦隊司令長官はそういう連中を指揮しなくてはならん。宇宙艦隊司令長官には“威”が必要なのだ。宮廷序列を押さえて軍序列を守らせるだけの“威”がな。それだけの“威”が無ければ大艦隊は指揮できん」

なるほど、“威”か……。メルカッツにはその“威”が無いという事か。確かに誠実そうでは有るが強さは感じられない。その所為で宇宙艦隊司令長官の人事が難航していたのか……。

ミュッケンベルガー元帥の屋敷で話したことを思い出した。 “一個艦隊の指揮なら私よりも上手いだろうな、だが艦隊司令官と宇宙艦隊司令長官は違うのだ” ミュッケンベルガー元帥の言葉、その意味がようやく分かった。

「この“威”と言うのは厄介でな。誰もが最初から持っているわけではない。ごく一握りの人間だけが戦いの中で徐々に身に着け、大きくしていく……。軍務尚書も統帥本部総長もメルカッツ提督の力量は認めていた。しかしメルカッツ提督はもう五十を超えている。これから“威”を身に着けるという事は不可能だろう……。残念なことだ」

そう言うとオフレッサーはワインを一口飲んだ。嘆くような口調だ。オフレッサーはメルカッツを惜しんでいる。“威”か……確かにそういう何かが宇宙艦隊司令長官には必要なのかもしれない。しかし、クラーゼンにその“威”が有るのか?

「閣下、クラーゼン元帥にその“威”が有るのでしょうか?」
俺の問いかけにオフレッサーは俺を見た。詰まらない事は聞くな、と言うような目をしている。

「そんなものは無いな、いや俺には見えんと言うべきか……」
「では何故?」
「……」
オフレッサーが憮然としている。どうもおかしい、何が有った?

「宇宙艦隊司令長官に俺をと言う話が有った」
「閣下を?」
思わずオフレッサーの顔をまじまじと見た。オフレッサーが面白くもなさそうに俺を見返す。慌てて視線をリューネブルクの方に逸らした。彼も呆然としている。

「メルカッツ提督を副司令長官にして実際の指揮を取らせる。要するに俺なら我儘な連中を制御できるだろう、そういう事だ」
「なるほど」
思わず声が出た。必要とされたのは才能ではなく“威”か……。旗艦の艦橋で仁王立ちになるオフレッサーを思った。この男に怒鳴りつけられたら家柄自慢の馬鹿貴族どもも震え上がるだろう。リューネブルクも何度か頷いている。

「だがそれが拙かった。艦隊戦の素人を司令長官にするとは何事、それくらいなら自分が司令長官になるとな……」
「クラーゼン元帥ですか」
俺の言葉にオフレッサーが渋い表情で頷いた。そしてワインを飲み干すとグラスを俺に差し出してきた。慌ててワインを注いだ。道理でオフレッサ
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