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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第四十五話 クラーゼン元帥
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から処断するというのは正しいのだろうがどうにももどかしいような気もする。

あんな男が息をしている事自体許しがたい事だ。あの男の所為でどれだけの人間が犠牲になったか……。決して表には出ない事だがそれだけに許しがたいという気持ちは強くなる。

ミュラーとクレメンツがオフレッサー元帥府に来る事になった。少しずつだが艦隊の陣容も整いつつある。もう少し手を広げるべきだろう、有能な男達を元帥府に引き入れるべきだ。

オフレッサーは下級貴族の出身だけに平民や下級貴族出身の男達を元帥府に入れる事にあまり抵抗は無いようだ。実際装甲擲弾兵に名門貴族出身者など居ない。能力さえあれば受け入れるのに抵抗は無いのだろう。

考えてみれば俺やリューネブルクを元帥府に入れた事も普通なら有りえない事だ。俺は皇帝の寵姫の弟、リューネブルクは亡命者、どちらも好まれる存在ではない。おかしな男だ、オフレッサーは自分自身の事をどう思っているのか……。

ドアがいきなり開いた。眼を向けるとオフレッサーだった。拙い所を見つかったか、そう思っていると
「俺にも飲ませろ」
そう言って近づいてきた。表情が険しい、何か面白くないことでもあったか? 俺達を怒っているようではない様子だが……。

リューネブルクがテーブルにグラスを用意する。俺がワインを注ぐと椅子に座ったオフレッサーが物も言わずにワインを飲みほした。少しは味わえよ、それだから装甲擲弾兵は野蛮人だと言われるんだ。もう一杯注いだ。

「司令長官が決まったぞ」
「!」
唸るような声だった。俺を睨むような目で見ている。思うような人事ではなかったか、一体誰だ? メルカッツではないな。

「どなたに決まったのです?」
リューネブルクの問いかけにオフレッサーは鼻を鳴らした。
「クラーゼン元帥だ」

クラーゼン? 思わずリューネブルクと顔を見合わせた。リューネブルクも訝しげな表情をしている。思わずオフレッサーに問いかけた。
「幕僚総監ですか?」
「そうだ、他に誰が居る」
「……」

幕僚総監、クラーゼン元帥。元帥の地位には有るが何の実権もない幕僚総監と言う名誉職についている。彼が姿を現すのは儀式、式典などの時だけだ。能力が有るのかどうかも分からない。その彼が宇宙艦隊司令長官?

「メルカッツ提督ではないのですか」
リューネブルクの問いにオフレッサーはジロリと視線を向けた。
「メルカッツ提督には威が無いからな」
“威”、不思議な言葉だ。一体どういう事なのか……。俺の疑問を感じ取ったのかもしれない、オフレッサーが口を開いた。

「帝国軍には二つの序列が有る、分かるか?」
「……いえ、分かりません」
俺の答えにオフレッサーはまた鼻を鳴らした。頼むからそれは止めてくれ、そのうちリューネブルクだけじゃ
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