第六章
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「東京だから」
「おい、何でそうなるんだ」
「だから私職場が変わったから」
東京、そこにというのだ。
「だからよ」
「東京にある俺の家に入ってか」
「何か駄目?」
「駄目っていうか御前彼氏とかいないのか」
「そんなのこの五年いないわよ」
「御前もそろそろ」
「二十九よ」
悠一より三歳下である。
「あと一年でね」
「そうだな、じゃあな」
「相手も探してるわよ」
「じゃあ余計に一人暮らしじゃないと駄目だろ」
「とりあえずよ、いい部屋が見付かるまではね」
あくまでその間まではというのだ。
「住まわせて」
「家賃出すんだろうな」
「そうするわ、会社の寮とか好きじゃないし」
麻里奈個人としてはというのだ。
「だからお部屋借りるわね、家事も一通りちゃんとするから」
「仕方ないな」
家事もすると聞いてだ、悠一はそれならと思った。一人暮らしだと何といってもこれが大変だからだ。それでだ。
一時とはいえ麻里奈を住まわせることになった、しかしその一時がだ。
麻里奈が部屋に入って一週間後にだ、二人は夜に悠一のベッドの中に一緒にいてそのうえで話をした。
「従兄妹同士ならいいんだよな」
「法律的にもね」
「そうだよな」
「何か成り行きでね」
「こうなったな」
「いや、まさかね」
麻里奈が言うには。
「意外ね」
「全くだな」
「それでだけれど」
麻里奈はさらに言ってきた。
「今ふと思ったけれどね」
「何だ?」
「お兄ちゃんお髭生やさないの?」
こう悠一に言ってきた、隣の枕から。
「そうしないの?」
「御前もそう言うのか?」
「だって似合いそうだから」
麻里奈は悠一のその顎と口元を見つつ言った。
「それでだけれど」
「それはな」
「嫌なの」
「不潔だろ、何か」
悠一は麻里奈に顔を向けて答えた。
「生やしてると」
「今更気にし過ぎじゃないかしら」
「そうか?」
「そうよ、今時お髭位はね」
「不潔でも何でもないか」
「お風呂やシャワーは毎日でしょ」
「それは欠かさない」
絶対にとだ、悠一は麻里奈にも断言した。
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